砂時計は刻々と。 《3》 ページ11
「いや!でも、手術をしないと…!」
声を少し高めて俺を説得するように
言ってくる。でも、ダメなんだ。ごめんなさい
黄「バスケが出来なくなったら生きてる意味ないから」
−ばすけが出来なくなったらあの人達との接点が
無くなってしまうから。
「……そう、ですか。」
黄「先生、余命は…何年ですか」
「…短くて半年…長くて1年半が妥当です」
黄「…そうっスかぁ…」
ハハ、と乾いた笑いを浮かべれば先生は
俺に向き直り、こう言った
「辛くなったり、息が出来なくなったりしたら
すぐ病院へ来てください。
それなりの処置を致します」
ふんわりと笑ってくれる先生に心の当たりが
ジーンとした。
だから、俺も笑って「ありがとうございます」と
声を掛けた。
* * *
あの日から、1年ちょっと。
目眩は一日一回はあるし、咳込んで血が出てきた
事だって何回もある。
口に含んだ水やご飯は喉を通らなくなり
結局は吐いちゃってる。
先輩達に気付かれぬよう、目眩がしても
何もないようなふりをした
迷惑は掛けたくなかったから
そろそろ死ぬな
って思い始めたのはつい最近。
目眩の回数も増えてきて麻痺が収まらない時だってあった
それでも先輩達は気付いてないみたいだから安心だった。
* * *
中学終盤の頃。キセキの世代と呼ばれた俺達は
だんだんと団結力を失っていった
『勝てばいい』帝光の理念のままに行動した彼等は
いつしか勝つことしか頭にないロボットのようだった
俺は高校に入ってそんな彼等を結びつけたかった
また一緒にバスケが出来るようにしたかった
高校に入ってからのWCでの試合
その時、黒子火神率いる誠凛高校は
キセキの世代が居る高校全てに勝った
その事でキセキの世代はまたバスケの楽しさを
思い出し、昔のようにバスケをたくさんした
俺達は週一でバスケをするほど
以前より仲睦まじくなったのだった
だけど、それが
黄「もうちょっと……早ければなぁ…」
独り言はぽつりと俺の口から出たあと
誰も居ない体育館の静けさに掻き消された
−もうちょっと和解するのが早ければ−
もっと長く皆とバスケ出来たのに。
馬鹿な話をして笑い合えるのに
俺にはもう時間がない
昨日、医師に言われたんだ
「…一週間後が…関の山でしょう」
「今からでも遅くはありません!手術をッ…」
最後まで医師は諦めることなく俺に詰め寄った
それに比べて俺はすぐに諦める
黄「もう、いいんス。」
願いは叶ったから
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作者名:みそらーめん | 作成日時:2016年11月25日 1時