【あんスタ】おおうそつき【深海奏汰】 (ページ9)

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潜む怨霊/3 ページ9

「降参、降参。そうだヨ、その跡はボクがつけたものダ」

「……誰？」

　背後に立っていたのは、自分より少し背の高い男の子。

　モデルみたいな端整な顔。アシンメトリーなインナーカラーの入る赤髪で、かなり目立つ出で立ち。

　何よりも目を引いたのが、白衣服で色が綺麗にドドメ色に見える液体の入った試験管。

　制服ではあるものの、ネクタイの代わりに首飾りで学年は分からない。

「なっちゃん、」

「自己紹介が必要かナ？２年の逆先夏目だヨ。とは言ってモ、気が向いたときにしかここにはこないからあまり会わないだろうけド。」

「……逆先、逆先……あ、『五奇人』の？」

「……キミは何故それを知っているんだイ？」

「朔間先輩から聞いた。」

「あァ、零兄さん。なるほどネ。」

　納得したような顔で、どこか虚空を眺める彼。

「なっちゃん、『しょうさい』をはなしてもらいます」

「ウン、奏汰兄さんの命令形は怖いなァ……？分かっタ。ただその前ニ、キミの事を知りたいナ」

　見定めるような視線に喉が詰まる。ただの自己紹介を求めているのに、なんだろう、この蛇に睨まれたような感覚は。

「A」

「Aちゃん……どこかで聞いたことあるネ。」

「あ～、それなりに専門的なものでは有名な家系らしいので」

「あァ、思い出しタ。昔からAの子は何らかの儀式がある～とカ、マミィが言ってタ」

「へぇ、まだ覚えててくれるんだ。あんな昔の儀式、とっくに記憶の彼方に行ったと思ったのに」

「もうやっていないノ？」

「あぁ、一応まだ家内では続いてる。あまり公にはしなくなったくらいで、近所の方くらいしか同伴しないよ」

「ヘェ」

「あの、ぼくをおいていかないでくださ～い？」

「あっ、すみません。んで話戻しますけど、この跡をつけた理由は？」

「ぶっちゃけただの事故なんだよネ」

「じこ？」

「そウ。まぁ半年前の話なんだけド──」

＊

「ちょっと師匠。また入り浸ってるノ？」

「ふふ、今日でおしまいです。だから、少しここを堪能していようかと」

　およそ半年前。ボクがまだ、一年生だった頃。

　『処刑』の道が用意された己の師匠は、余裕そうな笑みを浮かべる。

　ボクの台本は採用されなかったときから、この道は分かっていた。

「別にいいけどサ……師匠はそれでいいノ？」

「いいんです」

──まだなの？

──話は、翌日で発展するヨ。