ぼくの最終章/4 ページ30
「先輩……ありがとうございました。こんなろくに話したこともない後輩なのにそこまで話してくださるなんて、優しいですね」
「ん？俺は別に優しくもないと思うが……それに、お前はもう俺の可愛い後輩の一人だぞ。」
守沢先輩はそんな事を言って、某有名店のフライドポテトを一つ摘まむ。
それとほぼ同時に、私はアイスコーヒーのストローに口を付けた。
両者とも奢りますよという押し問答の結果、お互いのものを買おうという結果の代物だ。
「すみません、ありがとうございました。」
「構わないぞ。寧ろ、どんどん頼ってくれ。」
奏汰先輩の言う通り、素直に守沢先輩へ聞いてみれば、フードコートの店内を背景に丁寧に教えてくれた。
「やっぱり優しいですね」
「いや……俺は……」
先輩はふいと目を逸らす。何か後ろめたいことでもあるのだろうか。
「そういえば、この前明星くんに会ったんですけど──」
これ以上何か言っても悪い気がして、私は無理矢理に話題を変えた。
＊
「Goodnight、バルくん」
「わぁ！夏目！？」
仰向けになって寝ていれば、夏目が覗き込むように顔を見せた。
綺麗な顔は垂れた髪で少し隠れ、逆さになって影が濃くなっている。
「ど、どうしたの？」
「いヤ、こんなところで何してるのかなと思ってネ」
「あぁ……」
自分が仰向けになっていたのは噴水の縁。そりゃあ、不思議に思えただろう。
「んっとね、疲れて」
「バルくんでも疲れることがあるんだネ。ところデ、聞きたいんだけド」
「うん、何？」
夏目にしては珍しくすぐに済ませるつもりは無いのか、俺の頭の横に腰かける。
「キミが知ってる範囲でいイ。Aちゃんがどういう子カ、教えてくれるかイ？」
「……？」
Aちゃん？……Aのことか。
「駄目、かナ？」
「……ううん、それはいいんだけどね……？俺どころか『TrickStar』の皆、大体あんずに頼んでるからあんまり詳しくはないよ？」
「それでもいいんだヨ。」
「ん、分かった！」
俺と夏目が噴水の縁で談笑する。それは回りに、さぞ不思議な光景であっただろう。
＊
「……あった」
彼の昔の、思い出したくもないであろう記憶。それを見つけ出した彼は、俺に微笑みかける。
「奏汰くん、あの子にご執心だね？」
「……やっと、『おわる』んです」
俺──羽風薫はその言葉に、首をかしげる外無かった。
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作者名：竜花 | 作成日時：2019年5月26日 12時
