硝子の破片/2 ページ12
ひとまず放課後に待ち合わせをして再び現場へ。
奏汰先輩だけ呼んだはずだが、なぜかもう一人ついてきていた。
「えっと、はじめまして……だな？３年の仁兎なずな。よろしくな、に〜ちゃんでいいぞ！」
「はぁ……よろしくおねがいします。」
「『ふだん』は『あせったり』すると『かつぜつ』がわるくなるんですよ〜♪」
「うっ、うりゅしゃい！かにゃたちんがきゅうにちゅれてきたくしぇにっ！」
「……なんとなく察しました」
「さっきのとおり、ぼくの『くらすめいと』です。」
仁兎先輩。途中ほぼ何言っているかは知らないが、悪い人ではなさそうだ。
……申し訳ないけれど、ネクタイ見ないうちは一年生だと思っていたことは黙っておこう。
奏汰先輩は相変わらずニコニコ笑っていて、掴み所がない。
「んで、何でその仁兎先輩がいるんすか？」
「あの『まど』で、なにかしっているようだったので。『れんこう』しました」
そっと仁兎先輩に目を向ければ、なんとなく意思疏通が出来たのか苦笑いを返される。
本当に連行されたらしい。用事とかなかったのかな？
「その辺は問題ないぞ〜」
「……人の心を読まないでくださ〜い。というか、単純に疑問なんですけどに〜ちゃんって何ですか？」
「ん〜？仁兎と『お兄ちゃん』をかけてに〜ちゃん！かっこいいだろ〜♪」
とかいいつつ仕草や容姿は可愛いの権化である。
「あ〜、私調べるので仁兎先輩、奏汰先輩をよろしくおねがいします。色んな意味で」
「お、おう……ぶっちゃけかなり心配だけど、頑張るよ」
「ひどいですね〜、さすがにぼくも『むやみ』に『うごき』ませんので〜」
「授業中にいないのはどこの誰だよ。……にしても、この割れ方ひどいなぁ？」
「ですよね」
改めて割れた窓ガラスを見る。中心部にかけてガラスの残りが棘を作り、これは早めに取り替えてもらいたいものだ。
別にどこかの事件現場みたいにテープが張られているわけでもないから、私は目の前の床にしゃがみこんだ。
「……痛い」
途端。小さな痛みと共に、私の片腕から血が滲んでいく。
それに気づいた仁兎先輩が、慌てて私の首根っこを掴んで引き寄せた。
「……はは、なんだこりゃ」
仁兎先輩の乾いた笑いのその先。
先ほど私がいた窓ガラスの手前には、無数のガラスの破片が飛び散っていた。
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作者名：竜花 | 作成日時：2019年5月26日 12時
