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「ししょ〜?」

 ふいにひょこん、とひよこのような可愛らしい毛を覗かせたのは、『そら』だった。

「ソラ?衣装のままだかラ、まだ撮影の途中かナ?」

「終わったから、今から着替えに行くところでした!そしたらここから、キラキラした色とすごく懐かしい色が見えたのな〜!」

 可愛らしい笑顔を見せる彼に皆、和やかな表情を浮かべている。

「偶然かえ?もう、彼女にとってのメインキャストが揃ってしまったぞい」

 ええ、そうね。このまま、『あらし』や『あんず』、『はかぜ』や『みけじま』なんかも来てしまいそう。

 ずっと、この時が続けばいいのになんて、叶わないことを願ってしまう。

 叶うはずのない願望……いいえ、野望かしら。それに少し落ち込みつつも視界を泳がすと、先程の笑顔が八割方消えている『そら』と目が合った。

「A、ちょっと貸してもらってもいいですか?」

「ええよ。落とさんように気ぃつけてな」

 腕に座らせるようにして、私を抱えた『そら』。何をするのかと思えば、ぐるりと周りの人たちを見渡して、にっこり笑った。

 それに、嫌な予感でも当たったかのように分かりやすく顔色を変えた『なつめ』。

「……ソラ?」

「鬼ごっこ、しましょう!鬼はししょ〜たち、逃げるのは宙とA!それじゃあな〜!HaHiHuHeHo〜☆」

 気づいたときには、もう既に風を切る勢いで移動していた。

(……まぁ、既視感があるから別にいいのだけれど)

 衣装のまま走り回っているのはどうかと思うけれど、これはこれで楽しいわね。



 するりと器用に狭い通路を経由して、『そら』はすいすいとビル内を移動していく。

「knock!knock!」

 時折呪文のように聞こえてくる独り言は、きっと『Switch』ならではのものなのでしょうね。

「……しぃっ、です。」

 動きもしない私の口に手を当て、にんまりと笑いながらよく聞いて、と囁く彼。

 微かに、誰かが私を呼ぶ声がする。

 これは、『みか』?そして、『しゅう』。

「宙は。悲しいのも、痛いのも、苦しいのも嫌です。それは皆だって、Aだって一緒でしょう!?」

 ぎゅう、と縮こまる身体は段ボールの影に完全に隠れてしまった。

「……もう少しここにいます。声が聞こえなくなったら、走ろうな〜!」

 暗いところは嫌いですけど、と自信なく呟く彼は、それでもふふんと笑ってみせた。

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作者名:竜花 | 作成日時:2020年7月8日 23時

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