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「「「あ」」」

 そう、重なった声は三人分。一人は小さく控えめに、もう一人は思わずといった風に、さらにもう一人は大きく驚いて。

 その重なる声は懐かしい。昔、むかぁしのお話で、散々聞いた声ね。

「仁兎」

「……斎宮。あ、えっと。……元気?」

「そういうキミこそ、少し疲れが見えるね?」

 見下すように笑ってそう言うも、『なずな』と一瞬だけ目があって、二人そろってくすくすと笑った。
 『みか』もその様子に少しだけ頬を緩めたのが見えたわ。

「『Aちゃん、元気にしていた?』」

 ええ。

「なずな兄ィ、Aちゃん大事にしとる?」

「あぁ、勿論。ほら、斎宮」

 そっと私を受け取った手は『しゅう』の細い腕だった。



 利害の一致、といったところで彼らは共にESの物置部屋へと赴いた。

 いつの間にか、私は『みか』に大事に抱えられている。

 ガガガ、ジジジ、ジジ……と心配になってくる機械音。

「んあ、んあぁ〜?……お師さん、これ本当に大丈夫やのん?えらい変な音立ててねんけど……」

「……フム。学院にいた頃との機材とは違うものなのだね。貸したまえ」

 ひょいひょいと忙しなく動き回る『みか』は案の定ゴン、と鈍い音を立てながら近くの棚にぶつかった。

「全く忙しないね……仁兎、これはどこのコードかね?」

「あ、それはな……」

 こうして見ると、まるで昔に戻ったかのよう。

 ……いいえ、そうじゃなくて。『嫌なこと』があってこその関係なのかしら。

 Valkyrieが完成して、壊れて、その破片が繋がった歪な関係が生み出した今。

 その破片の中に、私も含まれているのかしら。

「Aちゃん、Aちゃん」

 ふと、小声で呼ぶ声が聞こえた。

「あんな、お師さんこの前な……」

 次回使うらしい音響機材はほとんど『しゅう』が占拠してしまったから、暇になってしまったのね。

 小さくも大きくもない機材は相変わらず不安になるような音をたてていた。

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作者名:竜花 | 作成日時:2020年7月8日 23時

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