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Contempt ページ30

「最初は俺と、たまたま通りかかったそこのヒーローくんでお菓子を摘まんでいただけだったのだが……そうだ、俺の実家からたくさん送ってくれてな、天祥院もよかったらもらってくれ!」
「そう?じゃあもらうね」
「おい」

 眉間に皺を寄せたまま動かない『けいと』の横に、『えいち』はまるで嫌がらせのように寄りながら座る。

「そして敬人たちは……紅月が揃うのを待ってるのかな?それにしてもこれ、噂のAちゃんだよね。なんでまた今更」
「紫之に聞いてくれ……」
「人形を渡しながら何か言っていたけど、かなり切羽詰まっていたようでね。ほとんど何を言っているのか分からなかったよ」
「ふうん?」

 『えいち』は、私にはそんなに優しくないみたい。それもそうね、私の場所……いいえ、世界そのものだったところは、彼と対立していたんだもの。
 あの場所にいるだけで、嫌でも聞こえてくるのは彼らの革命劇。少しだけ、外の世界を見てから思い返すと、なかなかにひどいものなのね。去年の何も知らない私とは違う、今の私ならわかる気がする。

「……この子、思ったよりも可愛くないね」
「天祥院、可愛くないというのは失礼じゃないか?」
「人形だし、いいでしょ。彼らがいないうちに……♪」

 その笑顔は、ひどく冷たいもののように感じた。

「人形の価値というものはよく分からないが、斎宮が大事にしているというのは何かすごいもののように感じるな」
「手放したんじゃなかったか?」
「僕も詳しくは分からないけど、この人形は時々見たことがあるよ」

 『ひいろ』は私に興味が湧いたようで、私の瞳をまじまじと覗き込む。覗き込まれているのに、目が合わない気がするのはなぜかしら。不思議なこともあるものね。

「……最近は仁兎や春川といることが多いな」
「その辺は去年の手芸部とガサゴソしてたよね。何やってたのかは知らないけど……ね、Aちゃんは知ってる?」
 
 私、当事者なのだけれど。そんな軽口のような言葉も伝わることはないから、少し歯がゆい気持ちになった。もう慣れたような気がしていたのだけれど、そう簡単に拭いきれるものではないのね。

「お、なんだもう揃ってたのか」
「鬼龍」

 突然声がしたと思えば、『きりゅう』が姿を現した。彼の足元しか見えないから、もうちょっとだけ上を見たいのだけれど、それが彼らに伝わることはなかった。

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作者名:竜花 | 作成日時:2020年7月8日 23時

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