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私の故郷、とでもいえばいいのかしら。ほんの三年……いいえ、二年と少しくらいね。最初は少しの間だけ遊びに来たり、置いていかれたり、何よりもここで暮らした思い出はどんなときだって色褪せることはない。久しぶりに見た景色は思ったより狭く見えた。
「それにしても、丁度よかったわぁ。なるちゃんに貰ったなんかすんごいお洒落なお菓子あってな？おれ一人じゃ食べ切れへんからちょっと食べてって！あ、緑茶しかないけど平気？」
「別に何でもいいけド……」
『しゅう』がいないからか、どことなく明るい雰囲気が部屋中にある。どうしても記憶から切り離すことのできない白熱灯はまだあるけれど、私はあんまり好きじゃないわ。
「ずっと思ってたんやけど、Aちゃん何も用意しなくてええんやろか？」
「どっちでもいいんじゃないノ」
「んあ、でもお仏壇にお菓子お供えするみたいになるんかなぁ……」
「……そのすごく微妙な例えやめてくれル？」
話しながら『みか』は手際よくお菓子やカップを並べていく。『しゅう』と違って『みか』はあまり拘りがないみたいで、目の前に広げられたのは急須にティーカップ。私もあまり詳しくはないけれど、誰が見ても歪な組み合わせだった。
「いただくヨ」
「いただきます」
『みか』は『なつめ』の向かいに座る。そして可愛らしいお菓子……ええと、何て言うんだったかしら。あぁ、そうそう、『カヌレ』。『はじめ』が教えてくれたの。
そのカヌレを小さく齧った『みか』はしばらく幸せそうにもぐもぐと口を動かしていたけれど、それはふとした瞬間に止まる。
「そういえば……今年に入ってなっくん、ここに来なくなったから知らんと思うんやけど、最近、この辺毎日プロデュース科の子に監視されてるんよ」
「なにそレ……大丈夫なノ？」
「ちょっと仲良くなったわ」
「……ソウ」
制服姿の『みか』は、ESで会う彼とはどこか違う。去年よりも落ち着いた雰囲気があるけれど、相変わらず心配になるようなことしか持ってこない。
「なんか七不思議を探してる〜とかなんとか」
「あ、それは聞いたことあるかモ。ちらほら変な噂は聞くネ」
「おれも最初はびっくりしたけど……別に悪い人でもないみたいやからいいかなって」
……ところで、その不思議な人って誰なのかしら。聞く限りでは色んなところから出てきて、暗いお話にも詳しくて……あら、なんだか『まよい』みたいな人ね。
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作者名：竜花 | 作成日時：2020年7月8日 23時
