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Branch ページ16

「久しぶり、なのかな。茨から話は聞いてるよ」
「……お前、本当に仕事が早いよなぁ」

 思わず自身の横に立つ彼女へ呆れた目を向けた。

「適当に座って。残念ながらお茶もお菓子も無くて、出せない。それはごめんね」
「別にいいよ。それで、あんずはどうしてここに連れてきたんだ?」

 彼女の視線はゆるりと佇む人形に向けられる。古い代物なのか、白い肌はくすみ、纏う洋服はボロボロだ。それはもう、斎宮に見せたらキレちらかしそうなまでにボロボロだった。

「例の人形の将来の話、だよね。単刀直入に言おうか……それなら、手放してしまえばいい」
「おまっ」
「ただ、引き取り相手に最適な人物がいる」

 それが、この人形の持ち主。と淡々と語る彼と、目線が合うことはない。
 おれはゆっくり口を開いて、それから──



「春川、悪い。に〜ちゃんと連絡取れないや」
「大丈夫です。友ちゃん、ありがとう!」

 星奏館の共有スペース。ひょっこりと顔を出したのは『ともや』で、『そら』はどこか影のある笑顔で出迎えた。私はテーブルの中央に置かれていて、『そら』と『にき』が立つキッチンがよく見える。

「友也くんも食べていきます?」

 『にき』はそう言うけれど、答えははいかイエスで答えてくださいと言わんばかりの声色。

「えっと、じゃあいただきます。」
「ちょっと待っててくださいね〜!」

 楽しそうな会話を聞いていれば、不思議と時間は感じない。ただ、私をさも生きている人間のように話すのは、少し心配になる。だって、普通はこんなことしないのでしょう?……いえ、あくまでも『みか』の受け売りなのだけれども。

「A、元気ないな〜?」

 あら、バレちゃったわ。でも、それを言うならあなた達だって、そうでしょう。そう思いながら『そら』を見れば、悲しそうな顔をする。
 かと思えば、取り繕うようにすぐに笑みを浮かべた。

「絶対にみんなを幸せにします!」

 ええ、そうね。私もそれがいいわ。誰も悲しまないハッピーエンドが欲しいの。いいえ、いっそのこと幸せなら、結末が来なくったっていい。

 人形だけれど、そのくらいは願ってもいいわよね?

 『そら』は、微かに微笑んだ。

 昼食の匂いがすると共に、間の抜けた『にき』の声がする。

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作者名:竜花 | 作成日時:2020年7月8日 23時

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