16枚目 追いつけない ページ18
「送っていくヨ」
その言葉を機に、私達は鞄を持ち、教室の電気のスイッチを切った。
空はもうすっかり闇に飲まれている。
*
一期一会、なんてよくいうけれども。ふいに、その言葉が蘇る。
街灯に照らし出されたどことなく見覚えのある顔。
「あれ」
ボクはなんだか頭が追いつかなくて思わず、え、と間抜けな声を吐いた。
子猫ちゃん……もとい、彼女と並ぶと、完全に同じではないが、雰囲気はとても似ていた。
以前と変わらず無愛想な表情。ふわふわとした明るい髪、やる気のない笑みをつくった口元。
「お久しぶりです、逆先さん」
校門の側に立っていた彼はエナメルバックを肩にかけ、そのやる気のなさそうな顔とは想像もつかないくらい律儀に一礼した。
「あんた、知り合い?」
「あー、うん。えっと、お久しぶりです。Aです、姉がいつもお世話になってます」
「あ、ウン……」
似ている正体はこれか、と心のどこかで思った。
「ボク、こっちだかラ」
「はい、それでは」
「またね」
心の整理が追いつかないまま、ボクは帰路を歩んだ。
思ったより、言葉は出なくて。すこし悔しかった。
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作者名:竜花 | 作成日時:2019年8月15日 2時