2枚目 桜の木 ページ4
──ジー、ジー、パシャ。
中腰で桜に立ち向かうボクは、さぞ不審者に見えただろう。
「ん、夏目?」
「バルくん」
ピントをいじっていると、明星スバルことバルくんが声をかけてきた。
「何それ、カメラ?」
「まぁ、ウン」
「へぇ、好きなの?」
「別二」
カメラに繋がっている赤い紐を手首にかける。
そしてボクはバルくんにレンズを向けた。
「あ、撮るの?いいよいいよ撮って撮って!キラキラに!!」
「キラキラって何……?まぁいいヤ。」
片手をカメラのシャッターに。
もう片方はカメラ本体に添えて。
「へへ」
「何笑ってるノ。ホラ、撮るヨ。」
カメラに自分の目を近づける。
レンズ周りを回してピントを合わせれば、カメラ越しにバルくんの顔が見えた。
カシャ、と軽い音。
カメラから目を離せばたちまちバルくんが近づいてくる。
「撮れた?ねぇ見せて見せて!」
「今は見せられないヨ。デジタルカメラと違うからネ。今度刷ったのあげるかラ。」
「へぇ、デジタルと違うんだ。」
「バルくん、興味を示すのはいいけどボクに覆い被さるのはやめてネ。」
バルくんの赤いネクタイがボクの肩からずり落ちる。
まだ会って間もないのになんというコミュニケーション力だろう。
「それじゃあね、夏目!」
「ハイハイ」
今日は真っ先に写真屋に寄ろう。
ボクらしくもないけれど、そんなことは関係ない。
「あれ、奇遇ですね」
「……」
そんなとき、ふと現れたセンパイにボクは腹が立って、力一杯の回し蹴りを決めたのだった。
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作者名:竜花 | 作成日時:2019年8月15日 2時