sugar candy/2 ページ25
『♪〜♪』
歌い、踊り、台詞を叫ぶ。
遠目からでも、その動きは明確だった。
私──Aはあの紙の通り、来てみればあのライブをやっていた。
「すごい……」
思わず漏れた声。
でも本当に、すごいものだった。
＊
「あ、いたいた。すみません、ちょっとよろしいでしょうか」
本当に束の間。
ライブは一時間未満にして、すぐ終わってしまった。
人混みに押されてグッタリしてベンチに腰かけていると、人影が近づいてくる。
「って、日々樹渉……！？」
「来てくれたんですね、ありがとうございます」
衣装の上にジャージを羽織るという、奇妙な格好。
「すこし、お話があるんです」
「あ、はい」
＊
「──これ、貴女でしょう？」
そう言って見せつけてくるのは、小さな子が笑い会う写真。
私には、見覚えがあった。
「小学の時ですね」
「あぁ、やはり貴女でしたか。」
「あの時、何かを約束しました。だけど、私は覚えていないんです」
「私もですよ」
ようやく、色々な場面での既視感に合点がいった。
昔、会っていたのか。
「不思議な出会いですよねぇ。」
「はい。……どうせ、私の考えも分かっているんでしょう？」
「考え、とは？」
「あら、意外。」
この際言ってしまおう、と思い、口を開いた。
「私は日々樹渉が好き」
「おや」
目を丸くして、次の瞬間微笑む。
「答えはNO。」
「自覚をお持ちのようで。でも、半分不正解です」
「え？」
可愛らしく口の前で指をクロスさせる彼。
「確かに、私はアイドルなので、今はお付き合いとか興味ありません。ですが、私は貴女をたった今、気に入りました」
「え、と……」
「約束しましょう、今ここで。『いつかまた、会いましょう』と」
ふわ、と微笑む彼は、昔の面影がまだ残っていた。
「はい、約束ですよ……」
小指を触れあわせ、『ゆーびきりげーんまん』と子供っぽく歌って見せる。
「では、私はこれで」
「はい。」
去って行く姿を見送り、席を立つ。
これでもう、彼と会うことは�爐覆き瓩世蹐Α�
──『いつかまた、会いましょう』。
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作者名：竜花 | 作成日時：2019年3月8日 20時
