君の歌に恋をする ２【歌い手】

ウタコイ５４ うらたside ページ15

店長の言葉に、皆耳を疑った

店長とキラの間に面識なんてなかったはずだ

でも、知ってた？

…なんだ、それ

店「歌詞さんに新しくシェアハウスに住む人がいるって教えてもらった時に、いろんなルートからキラちゃんのことを調べ尽くしたんだ

AAちゃんが、歌い手のキラで、お父さんから酷い虐待受けててっていうの…全部知ってた

けど僕はね、キラちゃんになにもしてあげられなかった

声をかけることも、僕たちの誰かを頼るように促すこともできなくて

あの子の孤独に気づいていたのに、見て見ぬ振りをしてたんだ

あの子、ボカロpのサクでもあるんだ

新曲の空の足枷なんて、まさにあの子自身だ」

店長は自嘲気味の笑顔を浮かべて、言葉を重ねていく

誰1人として、彼の言葉を止める人はいない

るすも驚いたように瞬くだけだ

そりゃ驚くよね

あの大人気歌い手キラが虐待受けてたなんて

店「あの子、父親から隠れるためにここに住み始めたんだ

だから、父親に見つかりそうな場所に…大学に行くと言うのが引き金になって、パニック起こして部屋閉じこもって、高熱で倒れたんだ

皆…詩人さんと、僕以外はなにも知らなかったし驚いてた

そのあと、目を覚ましたキラちゃんに皆で声をかけたことで僕たちを信用してくれるくらいにはなったんだ

これが、今までにあったことだよ

…あの子はとっても優しいから、自分を犠牲にしちゃうところがあるんだ

でも、とってもとってもいい子だから、皆あの子のこと大好きなんだ」

店長はるすの目をしっかり見ると、微笑ましいものを見たかのように笑った

…そうだ

あの子は、そうゆうところがある

誰より優しくて、誰よりすごくて

そして誰より…傷つきやすいんだ

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