勝利の女神/オリバー・ウッド ページ1
A・ヴィクトリアはグリフィンドールに所属する女の子だ。
いつも茶髪をふわふわに巻いて、スラックスを履きこなし、真紅のローブを身に纏って、長い睫毛からは髪とお揃いの奥深い茶いろの二つの瞳が覗いている。
156センチと小柄だが、長く、よくしなる杖で大胆な魔法を使うし、グリフィンドールのクィディッチ選手で、数々の素晴らしいプレーを残したレコードプレーヤーだ。
しかしそんな彼女も、一人の乙女であった。
オリバーの厚い信頼は恋愛感情の無さの裏返しで、人知れず泣きたくなるときがあった。
その癖にオリバーは目敏くAの異変に気がつくのだ。
それも、誰よりも早く。
そして不安がっているAをよく励まし、共にピッチへ手をひいて連れていった。
夜風が気持ちいいんだ、昼の風は厄介だけどと笑う横顔があまりにも綺麗だったのを覚えている。
名も知らない星たちが、Aたちを見守っていた。
本当に不安なのはこの気持ちが許されないことだと言うのに、オリバーはクィディッチの試合について不安がってると思ってる。
それが悲しくも有り難かった。
だって、この夜空を最後にしたくなかったもの。
「優しい風が吹くのね」
「ああ、自然と落ち着くんだ」
Aはそれでいいかと諦めた。
彼が自然体でいられる場所に、私は連れてきてもらえた。
それなら私も、彼が自然体でいられる場所ではないだろうか。
オリバーがかける言葉がAの自信になった。
「君ならいつも通りプレーできるさ」
「いつも通りって?」
「さぁね、レコードプレーヤーさん」
「もう!」
"ちゃんと言って!"
そんなこと、自分がオリバーに隠している癖に、言えるはずなかった。
オリバーといると、いつも周りを魅力する魔法を放つAからは想像できないほど弱気になる。
惚れた弱みね、と一人の時ならば、弱気を吹き飛ばせるのに。
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作者名:おーすし | 作成日時:2023年2月11日 19時