検索窓
今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:21,470 hit

退職二回目 ページ4

カツ、カツン、と音を立てて階段を下りると案の定太宰が暇そうに蒸留酒の入ったグラスを見ていた。こいつは大抵此処に居る。そして大体飲み明かして帰るのだ。俺はまた怪我が増えたせいで見えなくなった太宰の横顔を見ながら笑いかける。

「よぉ太宰?相変わらずの自 殺癖のせいか?その怪我は?」

「あぁ、戸上か。それと織田作も来たのだね。違うよ。この怪我は銃撃戦の途中でトイレに急いだら排水溝で転んだのさ!」

そう笑って否定する太宰に呆れる。やっぱりこいつ変だ。そして太宰よりも予想外な事を言う織田作さんが淡々と言う。

「そうか。急いでいたならしょうがないな」

「それツッコむ所……と言うか此処で何してたんだ太宰は?」

俺は相変わらず天然な織田作さんに頭を抱えつつ太宰に聞く。すると太宰はニッと笑って答えた。

「なぁに、考え事さ。ねぇ、戸上、織田作。物事は成功するより失敗する方が多い。そうだろう?」

「あーなんか先が読めたわ」

「そうだな」

うんざりする俺と反対に淡々と肯定する織田作さんに対して嬉々として太宰が言う。

「だから私は自 殺未遂を志すべきなのだ!という訳でマスター。洗剤ベースのカクテルをひとつ」

「ありません」

「無いなら仕方ないな」

ほらな!こうなった!!てかさ、

「もう少し織田作さんは太宰にツッコんでくれよ!?」

「すまん?」

なんで疑問符が付くんだよ……もう疲れるわ。するとバーの扉の閉まる音がしたかと思うと呆れた声が聞こえた。

「戸上君の言う通りです。織田作さん。貴方がツッコミを疎かにするから太宰君が暴走するんです。金槌で後頭部にツッコむ位が丁度いいんです」

そう淡々と言う眼鏡を掛けた青年の名は坂口安吾。俺が6年前に務めていた異能特務課のエージェント。あぁ、勿論その事を知ってるのは俺だけだ。だから秘密を持ってる安吾は後ろめたいみたいだが。するとそれを聞いた織田作さんが納得したように言う。

「そうか。マスター。金槌はあるか?」

やめろ。鵜呑みにしないでくれ織田作さん…そんな織田作さんに対してマスターは慣れた様子で答える。

「ありません」

「無いのか」

「無いなら仕方ないねぇ」

そう楽しそうに笑う太宰と反して安吾が頭を抱える。

「なんで伝わらないんですか……」

分かるぞその気持ち。俺はそんなやり取りを見ながら苦笑して思う。

本当にこいつらと居ると退屈しないな。

そういえば珍しく安吾が遅かったって事は仕事でもしてたのかな?そんな疑問を代弁するかの様に太宰が尋ねる。

「暫く振りだねぇ?仕事帰りかい安吾?」

退職三回目→←退職一回目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
81人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:那戯田沢 亜須 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年3月7日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。