退職二回目 ページ4
カツ、カツン、と音を立てて階段を下りると案の定太宰が暇そうに蒸留酒の入ったグラスを見ていた。こいつは大抵此処に居る。そして大体飲み明かして帰るのだ。俺はまた怪我が増えたせいで見えなくなった太宰の横顔を見ながら笑いかける。
「よぉ太宰?相変わらずの自 殺癖のせいか?その怪我は?」
「あぁ、戸上か。それと織田作も来たのだね。違うよ。この怪我は銃撃戦の途中でトイレに急いだら排水溝で転んだのさ!」
そう笑って否定する太宰に呆れる。やっぱりこいつ変だ。そして太宰よりも予想外な事を言う織田作さんが淡々と言う。
「そうか。急いでいたならしょうがないな」
「それツッコむ所……と言うか此処で何してたんだ太宰は?」
俺は相変わらず天然な織田作さんに頭を抱えつつ太宰に聞く。すると太宰はニッと笑って答えた。
「なぁに、考え事さ。ねぇ、戸上、織田作。物事は成功するより失敗する方が多い。そうだろう?」
「あーなんか先が読めたわ」
「そうだな」
うんざりする俺と反対に淡々と肯定する織田作さんに対して嬉々として太宰が言う。
「だから私は自 殺未遂を志すべきなのだ!という訳でマスター。洗剤ベースのカクテルをひとつ」
「ありません」
「無いなら仕方ないな」
ほらな!こうなった!!てかさ、
「もう少し織田作さんは太宰にツッコんでくれよ!?」
「すまん?」
なんで疑問符が付くんだよ……もう疲れるわ。するとバーの扉の閉まる音がしたかと思うと呆れた声が聞こえた。
「戸上君の言う通りです。織田作さん。貴方がツッコミを疎かにするから太宰君が暴走するんです。金槌で後頭部にツッコむ位が丁度いいんです」
そう淡々と言う眼鏡を掛けた青年の名は坂口安吾。俺が6年前に務めていた異能特務課のエージェント。あぁ、勿論その事を知ってるのは俺だけだ。だから秘密を持ってる安吾は後ろめたいみたいだが。するとそれを聞いた織田作さんが納得したように言う。
「そうか。マスター。金槌はあるか?」
やめろ。鵜呑みにしないでくれ織田作さん…そんな織田作さんに対してマスターは慣れた様子で答える。
「ありません」
「無いのか」
「無いなら仕方ないねぇ」
そう楽しそうに笑う太宰と反して安吾が頭を抱える。
「なんで伝わらないんですか……」
分かるぞその気持ち。俺はそんなやり取りを見ながら苦笑して思う。
本当にこいつらと居ると退屈しないな。
そういえば珍しく安吾が遅かったって事は仕事でもしてたのかな?そんな疑問を代弁するかの様に太宰が尋ねる。
「暫く振りだねぇ?仕事帰りかい安吾?」
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