ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】 (ページ34)

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第３４話　あの物売りは気味が悪いと君は言う２ページ34

　ルー君の主張は、恐らくこういう事だと思う。

　私達三人はハイメンダール巡査の話を聞いて急遽屋敷探索を始めて、そこで吹雪に見舞われて屋敷の中に迷い込んだ。洋服が濡れてしまったからティアナさんが代わりの服と一緒に部屋にやって来て。準備が終わって部屋を出てルー君と挨拶をして。

　こんな偶然と気まぐれが合わさった出来事を、予め予測して──その出来事をティアナさんが気に入って祝福するように黄色いゼラニウムを欲しがる事も含めて──何処ぞの花屋さんに仕入れを頼むことなど、はたして可能なのか？

　それに、この屋敷に関しての噂もそう。こんな噂を聞いてホイホイと花を届けにくる、親切で向こう見ずな人が居るのか？
　それに仕入れのトラックが行き来するような"現代的な場所"にそんなファンタジックな噂など、ハッキリ言えば似つかわしくない。

　火のない所に煙は立たない、という言葉を聞いた事がある。立ち込める煙はこんなにも狂おしい程に魅力的なのに、元の火がそんなにも現実味を帯びた物なのか？

　だからルー君はレナータさんを疑ったんだ。外の世界を拒み、外の世界から拒まれた屋敷に住みながら、彼女はどうやって物を仕入れているんだろう？どうして客人が欲しいと思った物がなんでも買えるんだろう？

　ああ、きっと。これが彼女の正体を見抜く為の鍵の一つなんだ。

「彼女には気をつけなくちゃ」

　そう言ったルー君の顔に、怯えた様子は無い。困惑、警戒、疑念。それらの感情が表情に現れている。店から出て行く時に呟いたこちらへの警告の言葉を小さく呟いてみて、眉を寄せてしかめっ面になる。

　でも、いくら考えてみても私達にはまだ情報が足りない。足りなさすぎる。答えにたどり着く為の鍵の一つを渡されたとしても、その答えまでの道筋が見えてこない。

　堂々巡りになるであろう前に、ルー君が前に言ってた事を尋ねてみよう。

「ルー君」
「んあ？」
「ティアナさんと別れた時にさ『先にレナータさんの店に行って、その帰りに話すよ』って言っていたけれど、私に相談したい事があったの？」