第35話 好奇心は猫と誰を殺したのか?1 ページ35
ルー君はポカン、と口を開けていたけれどすぐに「あー、言ったねえそんな事」とのんびりとした声で言った。
先程までの警戒しきって推理を広げていたルートヴィヒ・フェルカー君と今まさにボンヤリとしているルー君は本当に同一人物なのですか。
「ティアナさんの香水さ、なんか変じゃなかった? 香り」
ほへ? と間抜けな声を思わずあげてしまった。
「あれはフルール・ド・フルールの香りだど思うけれど……前にお店に来たお客さんがつけていたのと同じ香りがしたし」
「そうかな……僕には違った香りに思えたよ」
「そうなの?」
「うん、香りの記憶ってわりと残るらしいよ。あれはフルール・ド・フルールとは少し違った気がする。だってお母様が────」
そこまで言って、ルー君は一瞬硬直する。
「……身近な、香りだから」
そして、言い換えた。まるで今の発言を無かった事にしようとしているみたいに。
思えばルー君から親の話を聞いた事がない。
孤児院で出会ってから、もう随分経つけれど一度も親については言っていなかった。彼の過去を……孤児院に来る経緯を今まで聞いた事がない。
それは私も同じだからお互い様なんだけれど"お父さん"や"お母さん"と言った単語もルー君の口から出たのは初めてのような気がする。それに今『お母様』って言い方をした。……ルー君って良い所のお坊ちゃんだったのかな。
でも、そんな事私が問い詰めるわけにもいかない。話したくない事は、向こうが話したくなってから話せば良い。その方がルー君にとっても都合がいいだろうし、私にとっても都合がいい。
「……そ、そういえばさ。またティアナさんの話になるんだけれど」
「うん」
「どうして、頭の花飾りについて尋ねたの?」
「あー、あれね。実は彼女の花飾りを見た、時…………」
ルー君の言葉が不自然に途切れた。紫の瞳の視線の先には僅かに開いた1つのドア。
誰かの不注意で閉め忘れたとは思わなかった、私達を出迎えるためにドア自らが開いたんだと錯覚した。
好奇心は、猫を殺した。私達も、殺されに行ってしまう。
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/
作成日時:2020年3月29日 23時