181 オムライス ページ38
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三門市から離れて2日目の夜。
私は祖母と美しい夜景を眺められるレストランに来ていた。
祖母「好きなものを頼んでいいのよ?」
メニューと睨めっこをする私に祖母は言う。
好きなもの、…私が好きなものって何?
"全部やってみる"とは決めたけど、全部のメニューを食べるなんて私には出来ない。
…どうすればいいの?
ボーダーならいつも誰かが助けてくれたのに…。
っ…やっぱり私は誰かを頼ることしか出来ないんだ。
祖母「Aちゃん?どうしたの?」
私を心配する目が怖い。
決められない私を冷たく見ているように感じる。
…そんな目で見ないで。
『…これに…しようかな。時間かけちゃって…ごめんね。』
メニューを指差した私の手はバレない程度に震えていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
祖母「いただきます。」
『…いただきます。』
私が頼んだのはオムライス。
こっちに来てからの2日目、私の胸には震えるような冷たさが住みつき始めていた。
だから烏丸家で感じたあの暖かさをもう一度感じたくなったのだ。
私は一口食べて、スプーンを持つ手を止めた。
『…全然違う。』
そう、烏丸家で食べたものとは全く違うものだったのだ。
作った人は違っても、大体具材は同じ。
ここまで変わるものなの?
ここのオムライスの方が見た目も、味も素晴らしいはず。
でも、でも、っ…でも何も感じない。
"食べたくない"とは思わなかった。
"そのままを保ちたい"なんて思わなかった。
美味しくない…のかな?
祖母「やっぱり最近変よ?熱でもあるんじゃ。」
『違うの、全然平気。
ただこのオムライスが…
、
、
、
、
、
、
美味しすぎて…。』
言いたくない、言わない、言えない…。
っ…
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作者名:満月 | 作成日時:2023年2月19日 22時