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拳は兄貴の頰を掠るが、兄貴は一歩も動いていない。
兄貴「…夜目は効かないのか?いや狼ならあり得ない」
レオ「俺が混種だって覚えてる?」
兄貴「…言い訳は無用だ」
レオ「っち」
一旦距離を置くために後方へと飛び下がる。月明かりがあるといえど電気は無し。普通の人間だとほぼ真っ暗だろう。
兄貴は豹といったネコ科の為、夜目は効くらしい。
レオ「…狡い」
兄貴「今後こう言った不利な状況はいつでも出てくる」
暗闇に慣らせようと1度ゆっくり瞬きをすると、目の前には兄貴の姿が。
頭を下げ、咄嗟に避ける。獣化せずとも、人間よりも遥かに高い身体能力を持つのは獣子の特徴だ。
兄貴「逃げてばかりだと終わらないぞ」
レオ「…くっそ!」
やけになり、足をかけようとしたところ躱されカウンターに重心の乗った足をはらわれ押さえられてしまう。
兄貴「考えることをやめたらもうそれは負けと同じだ。先を見続けろ」
レオ「…」
兄貴「さぁ、立て。これでへばっていたら持たないぞ」
そう告げるも手を貸さず立ち上がるのを待ち続けている兄貴。髪の間から覗く紅い目がレオを捉えて離さない。
決して大きいとはいえない圧力に若干怖気付き始めるレオ。
だが、負け続けるのはどうも癪らしく、すぐに立ち上がり構えに入る。
兄貴「よし。いくぞ」
そのまま月が西の空に沈み始める頃まで、訓練は激しく行われたのだった。
朝起きて復習。飯を食べてから仕事。仕事終わりに勉強。からのご飯と訓練。
来る日も来る日も兄貴につきっきりで体に叩き込まれたレオは、3年後には混種がいたストリート出身だと思えないくらいに成長をしていた。
レオ「兄貴。今日は夜いるのか?」
兄貴「いや、今日から3日間。俺は出払ってしまう。俺がいない間、きちんと自主練しておけよ」
レオ「わかってる」
兄貴と別れ、慣れたように鉱山へと向かっていく。周りからの視線も気にならなくなっていた。が、長年の癖なのか、フードは外せないでいた。
レオ(いつ…ここを出ようか)
この3年間で学んだのは、対して強くもなんともない人の力にすがりっぱなしの枯子族に、嫌気がさしていたこと。また、奴らは自分たちの歴史を自ら終わらせたにも関わらず、また同じ道を辿ろうとしていることだった。
レオ(このままじゃ、全種族…いや地球が滅びるかもしれない)
逃げ出し、灸をすえる機会を伺いながら着々と準備を進めていった。
今は主人の指示に従順に従いながら…
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作者名:あげのり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/raimu2/
作成日時:2019年5月16日 15時