7 意外だったから ページ8
人に涙を見られたのは中学以来だろうか。
彼の制服に涙が溢れないように必死に目元を擦れば、「目が腫れる」だとか、予想外にも彼は私を気遣う言葉をかけた。
自分がプロデューサーに向いてない事は、自分が一番わかっていた。スバルくんが悪いだなんて思ってないし、きっと彼は私に喝を入れたかったんだろう。
けれど、それでもスバルくんの一言はどうしても悔しかったのだ。
少しの沈黙の後、彼は小さな声で、聞いても良いかと溢した。私は小さく頷く。
「クラスメートに対して何で距離取ってるのって。A組には手を抜いて、B組には沢山アドバイスあげるのは何でって。」
彼はよく分からなそうな顔をした。
「今から言うことは私の独り言だから……聞き流してくれる？」
「…仕方ないネ」
彼の肩から離れ椅子に深く座り直せば、彼は興味深そうに私の顔を見る。でもそれは茶化すような視線ではなくて、どこか心配そうな顔をしているようにすら見えて。
「私、本気でプロデューサーになりたくてこの学校に来たの。」
始まりはテレビ番組を見たその瞬間。
キラキラと輝くステージに、キラキラと輝くアイドル。
そして、無数に広がるファンのペンライト。
一瞬で、その世界に魅了された。
歌って踊れる可愛いアイドルになりたいと思うことはなかったけれど、そんなアイドルを支えるプロデューサーという職業に、幼いながらに無性に惹かれてしまって。
「クラスのみんなも良い人で、たった一人の女子生徒である私とも仲良くしてくれた。その中でもよく声を掛けてくれたのがスバルくんで、それからTricksterのみんなと出会って、毎日本当に楽しかった。
…でも、結局私はプロデューサーで、みんなはアイドルなんだって、嫌でも気付かされたの。みんなにとっての私はただのプロデューサーで、仲間とは違う存在だった。…わかっていたことなのに、それがどうしても辛くって。」
「…それで、倒れたんダ」
「うん。お医者さんにはストレス疲労って言われちゃったけど…助けてくれる人たちもいたんだよ」
「それがB組？」
彼の目つきが少しだけ鋭くなった気がした。それが何に対してかはわからないけれど、そこには多分、私に対しての敵意はなくて。
コクリと頷けば、少しの沈黙。
微妙な空気を断ち切るように、聞いてくれてありがとうと立ち上がったその瞬間。きゅっと、彼の白い手が私の手首を握った。
「ボクも一緒について行ってあげようカ」
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
