36 こぼれ落ちてしまうから ページ37
彼女は昔から、一人ぼっちを放っておけない人だった。
「あの、綺麗な目だね」
忘れもしない。一年の時、彼女から初めて掛けられた言葉は、その一言であった。
…あぁ、またいつもの揶揄いだ。
どうせ本当は気味悪がっとるんやろ。
強がってはいても、心がちくちくと痛む。
そんな俺とは裏腹に、彼女はまだ言葉を繋いでいく。
「琥珀と…瑠璃色みたい！素敵な色が二つもだなんて羨ましいなぁ。…ほら、私は髪の毛も両目の色も真っ黒で、つまらないでしょう？
……君はきっと特別な人だから、神様が宝石を付けてくれたんだね。」
" 普通 "
彼女が彼女自身をそう称さなかったことが、何よりも彼女の本音に聞こえた。
本気でこの子は自分の"普通"の髪や目を好きになれなくて、本気で俺の目を綺麗だと思っている。
気付けば無意識に彼女の袖口を掴んでいた。
恐る恐る彼女の顔を覗けば、少し驚いた表情の後、やっぱり嬉しそうに笑ってくれる。
昔からそうだ。
人から嫌われることが怖いのに、それよりも誰かを助けたいという気持ちが勝ってしまう、そんな優しい女の子。
だからきっと、彼女は明星くんにも声をかけた。
一年の彼は、空気が読めずに周りから浮いていた。
愛が欠如した誰かに愛を振りまいてしまう。
そんな彼女だったから、彼もそれを貰った一人だったのだ。
愛は、難しい。
始めは美味しくても、貰いすぎればその味に飽きてしまう。
だから離れていくのだ。気に入らないと思ったその瞬間、その料理からスッパリと距離を取る。
でも、愛は均等じゃなくちゃいけない。
貰った分は返してあげないと、片方だけが重くなって、そのうち全部、天秤からこぼれ落ちてしまう。
Aちゃんは、それに耐えれる程は強くない。
その点、なっくんは器用な子だと思う。
逆先夏目は孤独だ。あまりいい噂は聞かない。
クラスでは浮いた存在で、授業もでないし見かけても奇行ばかり。…聞く噂はそんなものばっかり。そんな彼をAちゃんが放っておくわけが無かったのだ。
彼は察しが良いというか、うまく立ち回れる人というべきか。あぁ、お師さんが気にいるのもわかるなぁって子だった。
( でも、あんたは鈍い方なんやね。)
周りに恵まれて、たくさんの愛を受け取って。
良かったなぁ、幸せで。
一年前は悪夢だったんだって忘れることができる。
でも、あんたは一番大切な愛を忘れとるんよ。
「明星くん、もう、遅いんとちゃうかなぁ」
ぷつん、絡まった糸を切る。
37 背中を押された気がしたから→←35 頼まれてしまったから
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
