35 頼まれてしまったから ページ36
あれから10分くらい経っただろうか。近道にといつも通る細道に入ろうとしたその時、ぐいと後ろから手を引かれた。
驚いて振り向けば何故だかそこには遊木くんの姿があって、目が合った彼はハッとしたように私の手を離す。
「今までごめんね、本当にごめん！ずっと悩ませてたんだよね、全部僕が鈍いせいなんだ本当にごめん！！」
そんな長台詞と共に、深々と頭を下げられる。
困惑で言葉を詰まらせていれば、彼は私には喋らせまいとでもしているのか更に続けて。
「あの、だからその、本当は今も声かけない方がいいかなって思ったんだ…！けど、でも、もう夜遅いしお家まで送らせて欲しくて…！」
いらない気遣いだったら言って！
なんて、まだ何も言っていないのに、ぼろぼろと泣きだされてしまう。
…えぇと、全く頭がついていけていないんだけど…
「…とにかく帰ろう？」
声を掛ければコクリと頷き、目を擦って私の隣を歩き出してくれる。
それから少しして、やっとのことで涙も乾き、俯いたまま隣を歩く遊木くんに、なんて声をかけようかと少し悩む。
…あ、そういえば。
明星くんのことだけど。
そう言いかけた途端、彼はビクリと肩を揺らし縋るように私を見る。
「助けて欲しいんだ！！」
がっしりと肩を掴まれたかと思えば勢いのまま体を揺らされて、取り乱したような様子に取りあえず落ち着いてと声を張れば、彼はハッとしたように力を緩めた。
「最近の明星くん、凄く怖いんだ…」
「…怖い？」
「いつも機嫌が悪そうで、それに怯えて他の友だちも離れていって…今は僕しか明星くんの側にいない」
( …そんなの、初めて聞いた。)
驚きで歩みを止めた私に、遊木くんは「急にこんな話してごめん」と申し訳なさそうな顔をした。
しかしすぐに力強く私を見てこう言うのだ。
「Aちゃんにしか頼めないんだ」
「…そんなこと」
皆まで言わずともお見通しなのか、彼は優しく微笑んで「できるよ」なんて言う。
どうしてそんなに自信満々なのかと問えば、「側にいればわかるんだ」と眉を下げた。
「きっと今が一番辛いんだ。それに後悔してる。
…本当はAちゃんのプロデュースを誰よりも楽しみにしていたのに、咄嗟に出た言葉でこんなことになるなんてって。」
ふいに先程のノートが頭に浮かんだ。
"早く帰ってきてね" という文字は、なぜだか彼の笑顔ばかりを思い立たせて。
「自分勝手でごめん。
…でも、明星くんを、助けてあげて欲しいんだ」
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
