27 そんなことでよかったから ページ28
四日目の朝も同じ時間に教室に入る。けれど、昨日までと少し違っていたのは、入ってすぐに氷鷹くんにおはようと声を掛けられたこと。
…入院前までだって、彼自ら私に声を掛けるようなことはなかったのに。少し驚いたが、おはようと返せば彼は満足気に笑った。
そしてもう一つ違っていたこと。
「昨日の昼、伏見殿と話をした」
私の二つ前の席に座る神崎くんが、私の目を見てそう言ったこと。
彼は戸惑う私のことなんて置いていくように話し出す。
伏見くんに聞かれたのは私をどう思っているのか、なんて直球なものだったらしく、彼はその時返したという言葉をそのまま口にしてくれる。
必要だから離す程度だった。
クラスメイトいう言葉がピッタリだった。
淡々と告げられたそれに少しショックを受けつつも、彼の言うことを否定できずにいた。
( …私はプロデューサーを、彼は同じクラスでアイドルを目指している。ただそれだけ。)
勿論避けていたわけではないけれど、人付き合いが苦手だったのは私の短所だ。
沈黙。
いつだってそうだ。もう少し外交的だったならどれだけ良かったか。黙り込む彼の顔を見れば、何故だか複雑そうな表情をしていた。それでも声のかけ方がわからずただ黙る。
彼は少し黙って私をじっくりと見るだけ。
射抜くような視線に目が離せなくなる。
「選べ」
「今貴殿が望めば、我はここで腹を切る。」
「…へ？」
刀を片手に真剣そうな彼の発言が冗談だとは思えない。
ただ脈絡もないし、なぜ切腹するのかと聞けば、女性に失態を犯したならば切腹のみだと当たり前のような顔をされてしまう。
「我はあの時、ぷろでゅうさあ殿や氷鷹殿を格好いいと思った。…そして、止められなかった自分を酷く後悔した。」
彼から発せられた意外な言葉に、私も、そして側で聞いていた氷鷹くんも少し驚く。
けれど、なんとなくわかる気もするのだ。どこまでも真面目で真っ直ぐな彼だから、仲がいいとか悪いとかは、さして重要でないんだろう。
「本音を言えば、我も奴の言葉に腹が立ったのだ。」
貴殿は決して無能ではなかった。
真っ直ぐすぎる言葉に、自然と目頭が熱くなっていく。喉に詰まった何かをんん、と払って神崎くんに手を差し出せば、彼は不思議そうに私を見た。
「じゃあ、私とお友達になってくれませんか」
「…そんなことでいいのか」
「うん、そんなことがいいの」
そう言って少し無理矢理に手を握れば、彼は少し戸惑った後、「A殿は笑顔のほうが似合うな」と笑った。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
