10 苦手だったから ページ11
明日が来なければとどれだけ願っても、当たり前のように朝日は昇ってしまう。正直あまり気は乗らなかったけれど、心配症な母親にそんなこと言い出せる訳もなくて、身体は大丈夫だからと家を出た。
事実身体は大丈夫。ただ、ちょっと心が乗らないだけ。
少し遅めに家を出て、人の多いクラスに入っていくのはまた目立ってしまうから嫌だ。かといって、朝早くに行って人のいないクラスで誰かを待つのも避けたい。
「…翌日から頼ってしまっている」
結局、朝早くに荷物だけを置いてすぐに教室を飛び出した。
訪れたのは昨日夏目くんと出会った廊下だ。周りに人がいないかを確認して、そっと、彼が押していた壁を押す。
ぐるり
半回転すれば目の前には薄暗い小さなスペースと細い階段が現れる。極力足音を立てずに階段を下りて目の前のドアを開ければ、相変わらずあまり整頓されていない実験室にゲーム機が散らばっていた。
「ここに何か御用ですか〜？」
奥の扉からふと顔を見せたのは黄色いパーカーの男の子だった。見たところ1年生だろうか。彼はニコニコと笑っている。
「え、と、夏目くんに用があって…」
「Hoho！ししょ〜のお友達さん！」
ししょ〜？、首を傾げれば嬉しそうに歯を見せて笑う。流れるように椅子に座らされ、彼は冷蔵庫からコップを取り出した。
ししょ〜…というと、由来はわからないけどあだ名みたいなものなのかな。
それにしても可愛らしい後輩さんがいたものだとぼんやりと昨日のことを思い返してみる。
…後輩さん？
「…ソラさんですか？」
「ソラのことを知ってるんですか？」
やっぱり。
「夏目くんの後輩さんですよね、お話聞きました。可愛い後輩だ〜って…いててて！？」
急に痛み出した頭に上を見れば、私の頭を片手でがっしりと握るししょ〜…基夏目くんの姿があった。
「ししょ〜、お友達さんが来てるのな〜♪」
「ソラ、この子何か言ってタ？」
「落ち着いて、取りあえず手を離して下さいししょー…」
「しれっと呼ばないデ」
態とらしく大きなため息を付いた彼は、じっと私の表情を覗き込み、またサボるのかとでも聞きたげに私を見た。
「なんか…しんどくて」
しんどい。その言葉を誰かに言うことが、自分の中で何となく恥ずかしかった。
人に頼ることが苦手で意見を言うのが苦手。
それでいて溜め込みやすい自分の性格が大嫌いだった。
昔から今まで何も変わりなくて、今でも人に弱みを見せるのが苦手で。
それを誤魔化すように笑えば、彼はなぜだか顔を顰めた。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
