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44 教えて欲しいから ページ45

折角だから暫く彼と話すことにした。

なんでこんな時間まで学校にいるの?とか、ソラさんのクラスのこととか…それらは全て一方的な質問ばかりだけど、彼は意外にも私とのお喋りに付き合ってくれるようで。


それからまた数十分。
彼は表情は変えず「聞かないんダ」なんて言う。


…教えてくれないと思って、態とこの話題を避けていたんだけれど。
「教えてくれるの?」と尋ねれば彼は自慢げに手の中でくるりとポールペンを回した。

そういえばあのペン、忘れ物とか何とかって…


「これは録音機付きのボールペン。もしもの為に机に入れておいて正解だったネ、運良く撮れてた音声で生徒会長も納得してくれたヨ」
「…普通持ってないよそんなの」

生徒会長さんとも仲いいの?なんて言えば苦い顔をされた。…良くはないんだね。



「…ねぇ夏目くん、もう一つ聞いてもいい?」


恐る恐る尋ねる。
ダメと言われたら諦めて帰ろうと思っていたが、彼は今回のことなら答えてると頷いてくれて。


「どうして、私に優しくしてくれるの」


それは凛月くんの時とおんなじ言葉。
けれど、目の前の彼の心理は全く掴めなくて。

前に聞いた時には「今は秘密」なんて突き返されてしまったけど、今日は答えてくれる…だろうか。
じっと彼の顔を見ていれば、彼は一口だけお茶を飲んでから口を開いた。



「…恩返しだヨ」
「恩……?」
「君は覚えてないみたいだけド、ボクたちは一年前にも話したことがあル。」


一年前の夏目くんに…?

記憶の中から手繰り寄せるように赤い髪の毛の男の子を探す。彼が言い難そうに「更衣室」と言うから、それをヒントに絞り込んで…

……一個だけ当てはまるものがあったかもしれない。


当時うちの学年では"占いがよく当たる奴がいる"なんて話が話題になっていたけれど、偶然大勢の生徒から追われている男の子を見かけたから、私は咄嗟に近くの女子更衣室に引き込んで…


「…あの」
「思い出したなら別に謝罪しなくていいかラ。助けて貰ったのに変わりなイ」

女子生徒は私一人だから特に問題はなかったのだけれど、今になって少し申し訳ない気持ちになる。彼は気にするなって言ってるけれども…


「…あの時のあの人、夏目くんだったんだ」
「クラスも違ったシ、名乗ってもないからネ」
「よく私と話したこと覚えてたね…」

それでその会話は終わって、なんだか気まずくてぼんやりコップの中を見つめる。
不意に横を覗き込めば、隣に座る彼は凄く真剣そうな顔でなにか考えているようだった。

45 秘密だから→←43 揶揄われてばかりだから



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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました!! (2022年3月29日 19時) (レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです!めちゃくちゃ楽しませていただきました!! (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり。さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり。 - 完結おめでとうございます!雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました(笑)これからもファイトです! (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年7月31日 11時

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