31 可笑しかったから ページ32
「凛月くん、重いよ」
膝からは「ん〜」と適当な声が返ってくるだけ。
教室に戻ってきたかと思えば私の手を引きガーデンテラスに走り出した凛月くんは、有無も言わせず私の膝で寝転んだ。
どうしたものかと最後の玉子焼きを口に入れる。
「…凛月くんは玉子焼きすき？」
なんの気なしに聞いてみれば「Aは？」なんて聞き返される。
好きと言えば「なら俺もすき」とはにかまれた。
「そのうち俺の為だけに作ってねぇ〜…♪」
そんな言葉に「どんな強制なの？」と笑えば、彼は「俺は相手にもされないねぇ」と頬を膨らませた。
…今のって拗ねるところなの？
「…あのね凛月くん、なんだか最近、A組のみんなと少しずつ友達になれてるの」
不思議だよね。
乙狩くんや神崎くんとも前より話すようになって、氷鷹くんからはちょっとしたことでも褒められるようになって。
正直嬉しかったの。
望みすぎは駄目だと押し殺していたけれど、本当はこんな日々をどこかで望んでいたから。
「まるで魔法みたいじゃない？少し前とはみんな別人みたいで………って、ごめんね自分のことばっかり…つまらなかったよね」
尚黙り込む彼は私の膝を枕にしたままふいとそっぽ向く。
( 沸点がわかんないよ… )
生温い風が髪を揺らす。
夏は暑いって嫌われる季節だけれど、私は意外と嫌いじゃない。
青空が綺麗だ。あと夜空も綺麗。
太陽の当たる海も、草木も、蝉の声も。
見方を変えればどんなものだって輝いている。
そんな夏が好きだ。
「Aは」
凛月くんの声に、閉じかけた瞼が上がった。
最近よく眠れてないせいか、うたた寝しそうになっていた。
軽く頬を叩き凛月くんになぁにと返す。
「Aはやっぱり、俺じゃだめ？」
よく分からずに黙り込めば、「俺とTricksterとどっちを仲間にしたいの！」なんて怒られる。
「凛月くんは鬼退治にでもいくつもりなの…？」
「行くわけないでしょ！」
普段はのんびり喋る彼が珍しく声を張ったから、可笑しくて声を出して笑ってしまう。
「…どっと疲れた」
彼は本当に疲れきったように溜息をつき、そしてじっと私の顔を見た。
「ねぇA、もっと笑っていいよ」
急にそんなことを言われたから、驚いて口元を覆った。
凛月くんの手が頬に当たる。
壊れ物を触るように。
愛くるしいものを見るみたいに。
「…もっと笑って」
彼はただ私を見て微笑んでいた。
…それじゃあ、前に言ったことと真逆だよ。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
