3、若武先生 ページ4
「じゃ立花、受験Bに戻っていいぞ。授業が終わったら、もう一度ここに来てくれ。特別クラスのテキストを用意しておくからさ」
「はい」
彩ちゃんが返事をすると、江川は出て行った。それに続いて彩ちゃんも出ていこうとする。
と、若武が急に口を開いた。
「立花、挨拶は?」
何言ってんだこいつ。
彩ちゃんもよく分かってないぞ。
「お前、新入りだろう。前からいる俺たちに、ちゃんとあいさつしろよ」
まじで、何言ってんだこいつ。
腹チョップかましてやろーかと思った。
威張ってんじゃねーよ!
「初めまして、立花彩です。これからよろしくお願いします。数の上杉くん、シャリの小塚くん女ったらしの黒木くん、天才の花珠さん、それに人間とポストの違いもわからない、威張り屋の若武くん」
このあいさつを聞いた瞬間、私は吹き出してしまった。
てゆーか、黒木と若武はなにしたんだよ。初対面であんなこと言われないよね、ふつう。
上杉と小塚も私と一緒にわらっている。黒木は目を光らせ、若武ムッとして彩ちゃんをにらんでた。彩ちゃんも睨み返していたけど。
「おい、立花」
そう言いながら、若武は彩ちゃんの方に1歩踏み出そうとした。
が、その肩を黒木が掴んで止める。
ほんっとに、若武ってすぐキレるよね。
「やめなよ、若武。お前の負けだ。なかなかシャレたあいさつだったよ、立花彩。さすが国語のエキスパートだ」
「キミの能力を認めるよ。仲良くしようぜ。ただし、」
ただし?
「俺なら、若武のこと威張り屋って言うより目立ちたがり屋って言うけどな」
わかるわー、目立ちたがり屋。どうしてそんなに目立ちたいのかよくわかんないんだよね。
と、この黒木の言葉を筆頭に、上杉も小塚も言い出す。それを聞いた彩ちゃんもガマンできないというように笑い出した。
私?なにも言わない代わりに、ずっと笑ってた。こっちの方が、タチ悪い気がする。
若武は黒木の手を払い除けると、忌々しそうにみんなを睨み回して言った。
「ああ、オレは、威張り屋で、目立ちたがり屋で、気取り屋で、そそのかし屋だよ。悪かったな」
分かってるんだったら、早く直して欲しいぜ。
不貞腐れた若武は、身を翻し、ドアから出ていった。小塚が呼び止めようとしてくれたんだけどね。階段をかけ下りる、荒々しい足音がひびいた。
私達は、顔を見合わせるしかなかった。
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作者名:つばくらめ | 作成日時:2019年4月22日 20時