KZと私と＜消えた自転車は知っている＞ (ページ17)

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16、エキスパートの大活躍ページ17

「自転車の中から取り出したんだ。これは、塗料だ」

やっぱりか。

「金属や木の表面に塗るものだ。ペンキとか、ワニスとか、漆とか、いろいろあるけど、これは、特殊な塗料だ。僕の考えでは、たぶん自動車の塗料だと思う。自転車の塗料っていうのは、ウレタン系とかラッカー系とかいろいろに分かれていて、一台の自動車の中でも部分によって違うものが使われるんだ。たとえばサビの出やすい所には、サビを防ぐ塗料とか、うるさい音を出しそうなタイヤまわりには防音用塗料とか」

……うわぁ。なんだろ、専門家だよね。

小塚ってすげーな、やっぱし。

「それで、自動車メーカーによって、それぞれ特徴のある塗料を使っているから、分析してみれば、どこの会社の何年型の車の塗料かは、すぐ分かるんだ。あとでやってみるけど、この色の感じからしたら、外国の車だと思うな。BMWとか、アウディとか。上杉、これでいい？」

「オッケー」

軽く言い上杉は、話を引き継いだ。

「なぜ自転車に、車の塗料がついたか。答えは、簡単だ。

「このふたつがぶつかっていたから」

そのとおり。てか、いきなり出てくんな」

え、ひどい。分かったから言っただけだし。

だって、ただ、話を聞いてるだけっていうのも、やだし。

まあ、そんな私を無視して上杉は、話を続けるんだけどさ。

「ぶつかった、といっても、自転車は止めてあったんだから、自動車がぶつかってきたということになる。それで、あの道幅を思い出してくれ。自転車が通るには、狭すぎる。それを何かの事情で無理やり通ってきたんで、止めてあった自転車を引っ掛けた。けれども、止まっている時間がなかった。そのまま通り過ぎようとした。で、盗難防止用チェーンが切れた」

車か。だったら、切れるのも納得がいく。

「この壊れ方から見て、たぶん自転車は、そのときに自動車のバンパーの下かなんかにくい込んで、取れなくなっちまったんじゃないかな。それでひきずったまま、とにかく走って、人目につかずに車を止められるところまで行った。そして、工具を使って自転車をはずして、ここに捨てた。あちこちに工具の跡がある。自転車の一部分がなくなってるのは、引きずったときに折れて取れたか、自転車からはずすときにバラバラになったか、どっちかだ」

小塚と上杉の話を聞いて、だいたい分かってきた。
これからどうするんだろう。若武の事だから、どうなるか分からん。