七人の狂人達 ページ4
──この聖杯戦争には、7人の参加者が居る。
既にその思考は正常な状態ではなく、皆揃って狂ってしまっている人達ばかり。
1人目の少年は本来の名を忘れ、記憶を忘れ、全てを忘れ、端へ端へと追いやられた魔術師。そんな彼は新しく名を与え、存在を肯定してくれた少女に傾倒、深く心酔した。
少年を再び生かした一人の少女。彼の魔術は、彼女の為に使われる。
2人目は愛するたった一人の家族を、『悪』だからと"正義の味方"に殺された少女。彼女は唯一の光を奪われて、残された十字架に狂信的な思慕、渇仰を抱く盲目者となる。
父の温もりを思い出に、ただひたすらに祈り続けるシスター。彼女の視線の中には、誰も映らない。
3人目は愛を知り、愛を学び、そして愛に裏切られた神父。あの怒りを、あの悲しさを決して繰り返してはいけぬと愛弟子を守るのだ。
永遠と魔術師を呪い続け、その歴史を焼却せんと望む老大人。彼の狂気で聖戦は混沌と化す。
4人目の青年はあらゆる人、物、現象が理解出来ず、人知れず狂った魔術師。理解出来ないが為に理解しようと全てをバラして、真っ赤な"中身"を見る。
誰も、彼を理解する事は出来ない。しかし彼はその理解を求める殺人鬼。
5人目は消えた父と母を探す、幼い少女。自身の手に余る力を持て余し、訳も分からず赤く染まった血だらけの手で抱擁を強請る。
この子供は、まだ子供である故に、父と母が居なくなった理由を理解出来ずにいた。
6人目の少女は他の誰とも変わらない、普通なだけの少女。普通が嫌で、誰かと同じは嫌だから、"聖女様"に非常を望んだ成れの果て。
少女にとって唯一の"聖女様"。その"聖女様"を本物にするのが彼女の願い。
7人目の青年は家族に認めてもらえず、誰にも見てもらえず周囲に拒絶され続けた。そんな彼は家族ではない赤の他人、義理の妹の足元へ頭を垂れる憐れな男。
救世主の如き義妹を外敵から守らんと、一人奮闘する魔術師。彼女がどんな表情をしていたか、彼は知らない。
誰かの為の善意ではなく、世界の為の正義でもない。それらは自分の為の願い、自分だけの願望。
誰にも彼らを断罪する権利はない。出来るとしたらそれは、同じ『願望に命を賭けられる者』だけである。同じ条件、立場で──願いを叶える為に。
既にその思考は正常な状態ではなく、皆揃って狂ってしまっている人達ばかり。しかし、その中からカルデアのマスターは選ぶ。
たった一人の勝利者を。
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作者名:紫陽花 | 作成日時:2020年3月24日 0時