18.人間が嫌い ページ18
朝日が壁の裏に隠れるその刀の影を映し出す。
腕を組み、壁に背を付ける付喪神は天を仰いだ。
「俺は人間が嫌いなんだ」
怒気を押し殺したような恫喝的な声が響く。
あまりの威圧感と殺気に思わず後ずさった。
「だからまぁ、審神者を前にしたらうっかり殺してしまうかもしれん」
乾いた笑いを零しているが、私としては全く笑えない話だ。三日月が放っていた迷いのある殺意とは違う。
この刀は、殺意を理性で無理矢理押し止めて話しかけてきている。
「……なら、なぜ私に構うんですか。ここに来たときから、あなたは私になにを期待しているんです」
そこまで嫌いながら、いや、憎しみを抱きながら、襲わない理由がわからない。
なぜそんな空気を纏いながら笑えるのか。
姿の見えぬ付喪神はしばらく沈黙し、頭を振った。
「……さてな。そんなの俺にだってわからんさ」
壁から覗く影が遠ざかる。
腹立だしさが胸を締め付け、唇を噛んだ。
この本丸は気持ちが悪い。
時の政府は私に再生を望んできたが、できるならいますぐ放棄してしまいたいぐらいだ。
けれどできない。逃げることは許されない。
最低限審神者としての責任を果たしてからでなければ、悪夢からは逃れられないのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 584人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒羽ひみと(プロフ) - 黒無さん» お褒めの言葉ありがとうございます！更新は今しばらくお待ちくださいませ！ (2020年9月26日 14時) (
レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - waterさん» ありがとうございます。更新止まってしまいすみません！時間ができ次第再開します。 (2020年9月26日 14時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
黒無(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます！更新待ってます！！ (2020年9月24日 12時) (レス) id: 2b98e9a281 (このIDを非表示/違反報告)
water(プロフ) - 面白い。いい作品に会えて良かったです。更新待ってます。 (2020年9月24日 12時) (レス) id: e941bacba9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒羽ひみと | 作成日時：2020年8月23日 12時
