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首「太宰君」
太「首領…Aは?」
首「一命を取り留めたよ」
手術室から出てきた首領はそう云った
そして安堵の表情を浮かべながら続ける
首「弾は残っていたけれど、内臓に掠りもしていなかった。ほぼ奇跡だね
けれど、出血量が多かったから、目が覚めるのには少し時間がかかるかもね。君は焦らずに通常任務に戻りなさい
と、云いたいところだが」
反論しようとしたら首領が言葉を区切った
首「メメントモリの一件以来、立て続けに色々起こっていたからねぇ。最近精神状態が安定していないように思うのだよ。本人は隠しているつもりだろうけどね」
首「目覚めた時に側に誰もいなければ、少々危うい。だから、此処にいてくれるかい?」
太「はい」
首「ありがとう。書類整理は此処でやっていいからね」
そうして私は彼女が眠っている病室に通された
中では、白い清潔な寝台で、病的な程に白いAが眠っていた
彼女の細い腕に、何本もの管が繋がっている
私は彼女の直ぐ側に椅子を置き、指先の冷たい手を握った
太「早く目覚めておくれ。A」
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翌日の夕刻
彼女の冷たい指先を温めながら頭を撫でていると、僅かに身動ぎ、唸った
太「A…?」
A「だ、ざぃ…さ」
するとゆっくりと目を開けて、酸素マスクの中から掠れた声を発した
まだ意識がハッキリしていないようで、目が何処となく虚だが、取り敢えず目は覚めたらしい
太「…おはよう」
漸く、肩の力が抜けた
.
首「うんうん、異常はなさそうだね
けれど、少なくとも1ヶ月は絶対安静。任務も無し。書類整理だけしてもらおうかな
それと、過度に動き回るのも禁止ね。無茶も禁止。分かったね?」
A「はぁ〜い」
目覚めた事を首領に伝え、病室まで来てもらった
勿論Aはまだ起き上がれないので、横になりながら少し怠そうな様子で、けれど微笑みながら間延びした返事をしていた
首「それじゃあ私は執務室に戻るからね。何かあったら太宰君に云うこと」
A「はぁ〜い」
首領は彼女の頭を二、三回撫ぜてから病室を出て行った
太「全く。心配かけるのも程々にし給え。肝が冷えたよ」
A「ごめんなさい」
'ごめんなさい'とは云ったものの、何処となく不満気だ
太「私も悪かったよ。君に怪我をさせてしまった」
そう云い、私は彼女の頬を撫ぜる
彼女は僅かに目を細めた後、外方を向き、云った
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作者名:紫乃 | 作成日時:2023年1月30日 17時