無限の未来 15th season (ページ49)

今日:8 hit、昨日:27 hit、合計:74,017 hit

749話ページ49

【樹】

赤「ふふっ、お帰り。Aもお弁当食べる？」

「ん、あとでいいや。あんまり、お腹空いてない…」

黄「そっかそっか。樹も飯食うだろうし、こっちで寝てていいよ」

さっき声をかけてくれた女の子と、席に戻ってから一瞬だけ目が合ったけど、軽く会釈をされて、ただそれだけ。

俺らが同じ車両にいるからといって、声をかけるどころか、騒ぐことさえなくて。

本当なら、今日のライブの話で盛り上がりたいだろうに、それさえ抑えて、そっとしておいてくれる。

その姿に、あの時、どんなに勇気を出して声をかけてくれたか、胸がいっぱいになった。

「ｹﾎｯ…ｺﾝｺﾝｯ、ｺﾞﾎｯ……ﾋｭｯ」

黄「あちゃ…ちょっとしんどかったか。樹ぃ～」

青「さんきゅ、代わるわ」

「ﾊｧｯ…ｹﾎｹﾎｹﾎｯ、ｺﾞﾎｯ…ﾋｭｰ、ｾﾞｪｯ…ﾊｧ､ｹﾎｯ…」

青「っと…どう？まだ苦しい？」

高地と席を移動してAの隣へ行けば、吸入をしても、まだ少しケホケホと苦しそうな咳は続いていた。

それでもちょっとは楽になったのか、俺の肩にもたれて、動画見て笑ってる。

「へへっ。見てぇ。A、これ、好きぃ～」

青「ん？今日の北斗のやつ？」

「そぉ～、どんまいTV～」

青「んはっ。俺、これ好きだよ。慎太郎が前にあげてたやつ」

Aも好きって言いながら、語尾がどんどん伸びていって、気づけばAは俺の肩でグッスリ。

この世界に入って11年が経った今日、たくさんの人に祝ってもらって、幸せだった。

黒「A、寝た？」

青「ん、グッスリだね。突っついても…つまんでも…起きまーせん」

黒「やーめろって。せっかく寝れてんだから。でも、Aが新幹線でここまでグッスリ眠れるのなんて、久々じゃない？」

青「だなぁ～。安心したんだよ、きっと」

どうしても、お客さんのそばまで行きたいとこだわったA。

生きていること、そばに温もりがあること、支え合えること、ただ純粋に…今が楽しいと思えること。

それをちゃんと、ファンの子達のそばで伝えたいんだっていう、Aの願いは、ずっと変わらない確かなものだった。

もう一歩、あと一歩を、積み重ねていこう…。