748話 ページ48
【北斗】
結局、Aと樹はデッキの広めのところで、2人仲良く今日のライブを振り返ってた。
楽しそうなAを見て、妥協しなくてよかった、なんて、浮かぶのは月並みな言葉。
黒「Aどう?」
「だいじょーぶ」
青「では、ない。酸素吸ってるし、だいぶマシではあるけど」
やっぱりどこか落ち着くのはこの2人で、しばらく俺も様子見を兼ねてデッキでお喋り。
そこへやってきたのは、きっとお手洗いへ行ったのであろう、先ほど俺らの近くに座っていたファンの女の子。
なるべくAが視界に入らないように、Aの前に立ったりして。
と、そこにさっき通った女性が戻ってきて、俺たちの前に足を止めた。
ヤバイかも…と思ったのは、俺も樹も共通の認識で、同時に、Aの喉がクッと鳴るのが聞こえた。
Aを庇うように立つ樹の後ろで背中をさすれば、じんわりと汗が滲むのは、俺も同じ。
でも、そんな構える必要はなかったんだ。
女性「あの…Aちゃん、私たちのこと気にせず、みんなと同じ席、いてください。その…うまく言えないけど…Aちゃんの全部、ファンも受け入れたいです!」
女性「AちゃんのいるSixTONESが好きだし、Aちゃんが好きなんです。幻滅するとか、絶対そんなことないから…。だから…」
彼女は、とっても澄んだ目をして、泣いていた。
俺の隣にいるAは、もっと泣いていた。
お互い、怖かっただろう。
ステージで、自分のことを話した時、これでファンが離れてしまったら、それまでだと覚悟をしたA。
自分が話したことへの反応なんて、分からないに等しいから、それもまた不安で仕方なかったはずだ。
それを、こんな形で直接受け取ることができたこと。
「あ、り…がと、う…ござい、ます…」
去り際に、彼女はAに向かって、“がんばれ”と、手話で呼びかけた。
でもその口は、“がんばろう”と動いていた。
きっと、Aだってそれは見逃していなかったはずだ。
黒「嬉しいね…。頑張ってきて、よかったね…」
コクコクと頷くAが、こちらを向いて嬉しそうに笑った。
樹も俺も、嬉しくって、涙が止まらなかった。
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美紀(プロフ) - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2021年2月24日 15時) (レス) id: e19dcb272d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かん。 | 作成日時:2021年2月23日 13時