無限の未来 15th season (ページ21)

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721話ページ21

【北斗】

Aも俺もドラマの関係で、しばらく家で会えないことが続いていた。

あのあと、一時治療を集中的にしたことで、Aの左耳は元のレベルまで聴こえ方が戻った。

左側から話しかけて貰えば、ある程度は聞こえるようになったから、会えない日は電話で話す。

黒「Aー？お疲れ～」

『お疲れ様。車椅子、上手になったー？』

黒「いんや、難しいわ。まだ1ヶ月だからねぇ」

『Aも、バスケ行きたいなぁ～』

実際に、義足での生活を送って、車椅子バスケもやっているAと、前に似たような、影のある役を演じた俺。

今回のドラマに関しては、お互いの情報交換が、かなり役に立っているし、少しずつ自信になっている。

『楽しみだね、ほっくんのドラマ』

黒「お前ねぇて。俺は、これでも心配してるのよ？ほら、前も言ったけど、俺がこの役やることで…」

『もー。それは、言わん約束やろ？』

黒「いや、けどさぁ…」

げどじゃないの！って、強く言うAには勝てなくて、俺は恥ずかしくも、モゴモゴしてしまう。

俺がこの役を受けるようになって、やっぱりインタビューでも聞かれることが多い。

初めから分かっていたことだし、Aも、何度だって大丈夫と言ってくれていたけど、やっぱり気にはなるもので。

『ほっくんさぁ…YouTube見てる？』

黒「ん…？俺らの？」

『そうそう』

黒「あぁ、うん。まぁ一応。それがどうかしたの？」

Aが言いたいのは、SixTONESの動画ばかりを見ているからなのか、関連で自分の動画がオススメされるんだという話。

俺だって、何度も無神経なAI技術にオススメされたことはある。

まだ、関西をメイン拠点にしていた頃の、幼くて、右も左わからない子どものA。

上京したばかりの、あどけない姿も、思春期に差し掛かったばかりの、少しだけギラついた姿も、それがいいか悪いかは別として、確かに残されていた。

「見ちゃったのよ。いや、見たのよ。片足で、勝ち試合なのに、甲子園のベンチで、人目も気にせずにワンワン泣く自分を」

その先を、聞きたくはないようで、それでも聞きたいと思うのは、彼女の声が少しだけ明るく感じたから。