無限の未来 15th season (ページ20)

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720話ページ20

【高地】

黄「Aっ！お疲れー！」

「こーちっ！ランウェイ、楽しかった！」

黄「ん。良かった良かった！あ…そういえば。新曲、大丈夫だった？」

新しく用意してもらったオリジナル曲を、初披露の今日だったけど、Aは耳の聞こえにくい状態で、決して万全とは言えなかった。

しかも、振り付けはかなりステップに重点を置いているから、足にも負担のかかりやすい曲。

曲中は楽しんでいるように見えたけど、本人の実感的にどうなのか、どうしても気になってしまう。

「大丈夫！ステップも、ちゃんと、いけた。自信、ついちゃった！」

黄「はぁ…よかったぁ……」

「これで、ツアーも、がんばれる気がする」

黄「ん。よかった。ほんと、よかった」

俺の方を見て、キョトン顔のAだけど、もうなんだってよかった。

実際、Aの耳が一時的とはいえ聞こえなくなったことも、今回のアウェイなステージへのプレッシャーも、全部不安だった。

年上だから、最年長だからって、余計なことばかり心配して、変にプレッシャーを増やしたくもなかったけど、それでも心配で。

だから…

「泣かないで…高地。心配かけて、ごめん」

黄「ん…。って…」

「へへっ、大丈夫だけど…さすがに、ちょっと疲れたのかな？」

黄「早めに、ホテル戻ろうな？樹には、俺から言っておくからさ」

しっかり最後まで、そんな素振りも見せずに頑張ったAの背中に、少しだけ伝わった不規則なリズム。

きっと、終わってから今まで、まともに彼女のことを見られなかった俺以外は、もう気づいているだろうけど。

「高地…？A、歩けるし…踊れる。足は、ある。できないことは、あるし…苦手なことも、あるけど」

「それでも、ちゃんとできた。大丈夫だった」

黄「さっさと着替えて、帰るぞ」

俺の、精一杯の強がりだった。

Aは、Aのできる最大のところで頑張ろうとしている。

この間、北斗にそう伝えたのは俺だった。

俺自身がそれを一番信じられていなくて、言葉にすることで、誰かにそう言い聞かせることで、自分がそう思い込もうとしてたのかもしれない。