535話 ページ35
【慎太郎】
緑「お疲れ、楽しめた？」
「うん！これ、みんなで食べよ〜」
久々の大阪を、樹の機転によって楽しめた様子を見たメンバーは満足げな様子。
しばらく治療でどこへも行けてなかったから、いい息抜きにはなったのかも。
ここ最近見ていなかった笑顔も見られたし。
青「明日からのスケジュール、ここ置いとくよ〜」
緑「あー、ありがとうー！」
「一旦部屋戻っとるね、荷物整理してくる」
緑「ん、オッケー」
Aが部屋に帰っても、部屋に戻らないこの男と2人きりになったってことは、そういうこと。
樹がどんなつもりで今回Aを誘ったのかは、大体把握できてるつもりだけど、満足そうにニヤつくこの男を見ると、案外違ったのかとも。
緑「で、なに？」
青「楽しそうだった。スッゲー楽しそうだった」
緑「デートのつもりじゃなかったの？」
青「最初はな？でもホントに、ただ息抜きになればいいかと思って。だってさ…辛かったんだよ」
やむを得ず、治療スケジュールとの兼ね合いで、無理をしないといけないA。
体にとってはハード、そんなことを分かっていても、止めることもAにとって負担になる。
何度も経験してきたことだった。
これまでと違うのは、そこに息抜きをできるキッカケも上手く見つけ出せないって状況。
青「多分、本人も気づいてなかったと思うんだよね。笑えてなかったこと」
緑「…悔しいけど、樹しか気づいてないよ」
青「え？マジ？」
緑「マジだよ。で？」
青「…やっぱあいつが笑ってねぇと無理だわ、俺。昔7人でも大阪巡っただろ。“懐かしいね”って言いながら回ったんだ、俺ら」
青「“懐かしい”って思えるくらい、一緒に思い出作って、時間重ねてきたんだ。伊達じゃねぇ…って、そう思えた」
これから、そんなこといくらでも増えるんじゃないのって樹の肩に手を置けば、Aより泣き虫な樹。
笑ってない、笑えていないAを見ると、消えてしまうんじゃないかって、不安だったんだって。
本当に、Aのことになると…樹は。
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
