どんな貴方でも。 (ページ19)

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遠くの親戚より近くの他人ページ19

スーパーに駆け込んでお目当ての食材を掻っ攫う。
急いでレジに並べば、パートのオバちゃんが笑いながら会計をしてくれる。

「あら、Aちゃん。そんなに急いでどうしたのよ。」

「ちょっと色々あって時間遅くなっちゃったんですよ～。妹たちが待ってるんで、早く帰らないと、と思って。鈴木さんも、パートお疲れ様です！」

笑いながら言えば、確かにいつもより遅いわね、と言われてしまった。

引っ越してすぐの頃、このスーパーまで行くのに迷っていたところを助けてくれた、オバちゃんこと、鈴木さんとはもうすっかり仲良しだ。
ちなみに、近所に住んでいたことが判明し、さらに仲良くなったのは余談である。

「何かあったら言ってちょうだいね。まだ学生なんだし、ご両親も忙しいみたいだし、頼っていいのよ！近所のよしみなんだから！！」

遠くの親戚より近くの他人とはよく言ったものだ。
優しい鈴木さんは、私や弟達を孫のように可愛がってくれる。
父の帰りが遅く、私も遅くなるときには、鈴木さんの家で預かってもらうことも多々あった。

引っ越してきたばかりの私達に良くしてくれて、とても感謝している。
このご時世、中々他人を信用することは難しいが、それでもなにかと私達の世話を焼いてくれて、今では家族同然だ。

「ありがとうございます！じゃあ、何かあった時は頼らせてもらいますね。本当にありがとうございます！」

鈴木さんには、お母さんが亡くなっているということを伝えられていない。
優しい笑顔に、罪悪感で胸が苦しくなる。

スーパーを出て、暗くなりかけている空を見上げる。

あんなに優しくしてもらっていながら、私は偽ったままでいいのだろうか。
いつか恩を返せる日が来るのだろうか。

いつか恩返しが出来たらいいな、と思いながら家までの道のりを急いだ。