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「少しばかり待ってておくれ」
そうAに云い残し
そして最上階に上がり
重く厚い扉を二回軽く叩き中に入る
「失礼するぞ」
「あれ、紅葉君。Aは如何したのかな?」
入った先は首領執務室。
何時も鴎外殿とAが居る場所
「Aなら部屋で菓子を食べておる」
「では何故君は此処に?」
「Aには少し悪いが
こうでもしなければ、鴎外殿と二人きりで
話せぬと思ってのう」
何時もと変わらぬ執務室
窓からは陽の光が差し込み綺麗に反射する
然し何時もと少しだけ違う
…鴎外殿の側にAは居らぬから
袖で口を隠しながら私はそう云い
そして間合いを取る様に窓の方へ近づいた
「私と二人きり?まるで口説き文句だね
如何したかな、紅葉君」
そう鴎外殿は砕けた様に笑う
口を隠していた袖を下ろし
鴎外殿を真っ直ぐ見据え私は云った
「Aを何時迄閉じ込める積もりじゃ?」
その瞬間、二人しか居らぬ部屋は
確かに凍り付く
一瞬鋭くなった鴎外殿の眼光は
直ぐに其の瞼が隠し、口角が上がった
嗚呼、何時もの鴎外殿の笑みじゃ
「閉じ込める?何の事かな」
其の言葉には歯に絹着せぬ敵意が滲み出ておった
「六年。Aは六年もの間此の
一歩も出て居らん
良い加減Aを解放してやらんか」
「ははは、何かの
「此れが冗談を云う顔に見えるかえ?」
「…幾ら何でも証拠不十分且つ非論理的なのだよ
Aに此処を出ないのは
此処から出る必要が無いからと
考えなかったのかな?
紅葉君らしくない穴だらけの思考だね」
想定内の答えじゃ
確かに其れだけでは証拠不十分且つ非論理的。
じゃがのう、私が其の様な生半可なモノで
此処に来たと思うな
「世迷言を。Aが
鴎外殿の命しか聞かないのを善い事に
彼の執務室奥の部屋に必要最低限の物を揃え
外での任務を与えず
Aの外へ出る意味を
完全に無くしているのであろうが」
「…」
変わらない笑みの裏で
何かが崩れる音がしとるのう
私の声一つでAが解き放たれるとは思わん
…然し、閉じ込められておる自覚も無しに
笑うAを見ると
居ても立っても居られンのじゃ
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麗(プロフ) - 15ページ 中也君な ではなく 中也君の ではないでしょうか? (2021年5月24日 7時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ザック - 面白かったです。ミステリアスで、文も読みやすかったです。ありがとうございました! (2020年1月8日 19時) (レス) id: fc99185244 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - あれ?なんでだろう、目から塩水が (2019年8月12日 12時) (レス) id: 610253a17e (このIDを非表示/違反報告)
はなを(プロフ) - 幸人さん» コメント、そしてお気遣いありがとうございます!これからの展開にどうぞご期待ください! (2019年6月21日 18時) (レス) id: e980c2186f (このIDを非表示/違反報告)
幸人 - とっても面白いです。無理をしない程度に更新頑張ってください。 (2019年6月21日 8時) (レス) id: fa5f2782df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなを | 作成日時:2019年6月17日 18時