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A『いやぁ、沢山寝ましたね。今回も頭が痛くなる案件があったのですか?』

私は食事の乗る卓を見ながら足をバタつかせた。

裳裾がそれに伴いフワリと空気を含む。

今はお昼時だ。

紅明「いや、唯々量が多すぎました。」

寝起きのため頭が痛いのか、手を頭にやる紅明様。

A『そうですか。じゃあ、暫くはゆっくり出来ますね。お仕事はやっつけたんでしょう?』

紅明「ええ、まぁ。Aの将棋の相手を出来るくらいには、ゆっくり出来ますよ。」

紅明様がスープを啜る。

A『それでは、貴方様が忘れて、油断した頃に挑戦させて貰いますね。』

私は両手に顔を乗っけて答えた。

紅明「…それ、意味あるのですか?」

A『さぁ。どうでしょうか。でも、それぐらいしないと紅明様には勝てる気がしないので。』

そう言うと、努力の仕方間違ってますよ。と返す紅明様にやらないよりはマシです。と返して

椅子から立ち上がり窓をあけた。

因みに私は食事をとうに終わらせている。

紅明様の食事が終わるのを待っていただけだ。

A『紅玉は今頃バルバットに着いたでしょうか。』

私は窓から空を見上げた。

紅明「予定通りに行っていれば今日が到着ですね。」

A『…少し、寂しいです。』

そう、この間紅玉はバルバットへと嫁いで行った。

バルバットの新しい王と結婚するのだとか。

個人的に開いた彼女を送り出す会では、おおいに泣いた。

だって、下手したらもう会えないんだもの。

堂々と泣いた。それで良いのだ。泣き顔を晒して困る連中は招待していないので。

紅明「それは、皆同じです。兄王様なんでもう少しで泣き出す寸前でしたよ。真顔でしたが。」

A『そうですね。私もここに来てからもう五年。紅炎様の表情は何となく把握しました。あれは、泣き出す寸前でしたね。真顔だったけれど。』

いえ、婚約中のことを考えると11年。

そこそこ交流があり大体紅炎様の性格は分かってきた。

弟や妹が大好きだが不器用なのだ。心では花を咲かせていても表面では何もわからない。

最初の数年はそうだった。しかしある時気づいたのだ。

微妙に顔が動いているということに、微妙に頬が緩んでいるということに。

それからは、以前と比べて表情が読み取りやすくなった。

相手の表情を把握しておくという事は商いにおいてとても重要なことだわ。

商いしないけれど。

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作者名:ラーメン | 作成日時:2022年2月10日 1時

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