【男主】重い愛【碧棺左馬刻】 (ページ19)

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「俺は中身も外見もボロボロで、多分きっと…母親も妹も限界だった。ある日、いつもの様に俺を殴っていた親父を、母親が刺しやがったんだ」

『えっ…それって』

「そりゃもう地獄絵図、一面血の海。人殺して生きていけるほど世の中甘くねぇから、母親も後追いして俺ら二人だけ残った。家族は妹だけ…その妹も、今は別々で暮らしてる」

つまり

左馬刻さんは独りぼっち

守ってきた妹さんさえ

今は手の届かないところにいる

同情、偽善者

左馬刻さんは一郎さんをそう表す

けど、それなら俺はどうなるんだ

俺だって今この話を聞いて

同情するしかないじゃないか

左馬刻さんの嫌う

偽善者じゃないか

『左馬刻さん、俺っ…俺あなたの力になれない、荷が重すぎます』

「別に理解しろとか、こういうことがあったからどうってことじゃねぇよ。お前の話を聞くための手段に使っただけだ」

『違っ…これからあなたと過ごして、俺は本当にあなたのためになるんでしょうか』

「俺から逃げたいか？」

『まさか、あなたは俺の恩人ですから』

左馬刻さんに感じていたものは

これだったんだ

両親を失い

たった一人の妹とも会っていない

それが彼から感じた切なさ

俺は、それを埋めようとしていた

無意識にその心の隙間を埋めようと

けれど、俺は彼の心に入れるのか

家族でもない、友達でもない

ただ家を飛び出してきたガキだ

彼の傷は大きすぎる

俺には塞ぎきれないほど大きな傷

『俺、必要ですか？』

「どういうことだ」

『あなたに寄り添いたいと思ってました。助けてくれたから…俺はあなたのためになりたい。けど…俺はきっと無能だ、何も出来ない』

「そんなことねぇよ」

『嘘ですそんなの、俺は所詮…兄の道具以上にはなれなかった。それ以外に出来ることなんてなかったんです』

あぁ、この流れは俺の番か

こんな話、気持ち悪いけれど

左馬刻さんは話してくれたもんな

たとえ引かれても、嫌われても

俺は全てを話す義務がある

『俺、普通の男じゃないんです。左馬刻さんも気づいてたでしょう？俺が女だって』

「あぁ」

『女みたく胸もあるし、子供も出来る身体です。どう頑張っても、普通の男にはなれないんです』

「……」

『家族からの目に耐えられませんでした。どうして女らしく出来ないのって、それを強いられるのが苦痛でした』

これを言っても

左馬刻さんは離れない

一郎さんのその言葉を

少し、信じてみてもいいだろうか

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