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「じゃあまぁ、俺から話すかな。お前まだ迷ってんだろ?話し終わるまでゆっくり考えろよ。俺は全部話してくんなくったっていいから」
『だ、から、それは…!』
「わぁかってるって…サシじゃねぇって言いてぇんだろ、分かってる。悪ぃな、卑怯なマネして」
『…ホントです』
流石ヤクザだと言わずにはいられない
徹底っぷりだ
俺がどんな選択をしても
必ず喋らせる方法を分かってる
優しいけど、やっぱり怖い人だ
「座れよ」
何故かリビングから
左馬刻さんの寝室へ移動した
掃除以外で入ったのはあの日以来
改めて見ると何もない部屋だ
クローゼットやベットはある
必要最低限って感じ
「こんなこと人に話すのは初めてだ」
『左馬刻さんの話?』
「あぁ、一郎には酔った時になんか喋ってたらしいがな。記憶ねぇし、大したこと喋ってねぇだろ」
『はあ…』
「んで、あー…まぁお前も気づいてんだろうけど、俺の親父ははまともな頭してなかったクソ野郎で…母親は優しい人だったけど、やっぱどこかイカれてた」
ポツリポツリと話し始めた左馬刻さんは
昔を懐かしむように目を伏せた
「親父はよく言うDV野郎で、母さんにいつも乱暴してた。俺にも殴ったり蹴ったり、暴力ばっかしてきたけど、その度母さんが間に入って代わりに殴られてた」
『………』
「そん時は俺も痛いのは嫌だったから、母さんが代わってくれたのが嬉しくて、あんま深く考えてなかったけど、それから数年経ったある時、俺には妹が出来た」
『妹…』
「そ、初めて守りたいもの…守んなきゃいけねぇもんが出来て、それからは同じように母親も守る対象として見るようになった。けどそれが、地獄の始まりだった…」
辛い記憶を思い出しているのか
彼は自身を抱きしめるように腕を回して
皺になるほど強く服を握っていた
痛そう
彼は怪我などしていないのに
その姿は酷く痛々しい
「あの男は俺が前に出るようになってから、俺に集中して暴力を振るうようになった。それで妹や母親を守れるならそれでもいい、それでもよかったけど…正直、なんで俺なんだって、恨んだこともある。俺ばっかこんな目にあって、何度逃げ出そうと思ったか…」
『左馬刻さ…』
「でも、逃げられなかったんだ。逃げたいと思っても、俺が逃げたら次は妹か、それともまた母親が庇うのか、そう思うと逃げることなんて出来なかった」
左馬刻さんが自虐的に笑う
その乾いた笑い声が
しんとした部屋に響いた
.
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絵描きさん(プロフ) - ぺらさん» 分かる(´-ω-`) 左馬刻様をもっと普及させるためにも頑張ります〜 (2018年12月9日 0時) (レス) id: 2c9b4e9ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺら(プロフ) - もう、推しが尊い (2018年12月5日 5時) (レス) id: 30c81c3732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絵描きさん | 作成日時:2018年10月18日 14時