一つの大切な居場所が消えた日 ページ30
カバンに教科書と筆記具を詰める。
早く、出ていこう。
そう思い立ち上がった。
しかし、不運なことにその瞬間、目が合ってしまった。
ドキッと跳ね上がるも、まぁ、目が合うくらいどってことない、と切り捨てた。が、しかし。ニマニマと笑いながらこちらに近づいてくるではないか。
｢ねぇねぇ｣
｢な、なんでしょう｣
｢なんで逃げんの？｣
｢逃げようだなんて｣
｢してたよね？｣
貼り付けた笑みで圧をかけてくるフロイド。
その奥に見えるジェイドにヘルプを求めたがうすら笑みを浮かべているだけで、そこから1歩も動いてくれないことを理解し絶望した。
｢そんなに隠れちゃってさァ、クマノミみたいだねぇ｣
｢く、くまのみ｣
｢それで？クマノミちゃんはなんで俺から逃げんの？｣
｢え〜.......｣
必要以上に迫ってくるフロイドに恐怖しかわかない。
体が私よりも大きくなっていて、別人にしか思えなかった。まぁ、3歳から何年経ってんだって話なんだけど。
いつの歳と比べてんだってね。
｢そぉだ！ねぇねぇ、これ、見覚えない？｣
｢.......｣
そう言って服で隠れていたネックレスを取り出すフロイド。そのネックレスを見て息が止まった。
だって、それ、私の
それはあの時、交換したものだった。
｢なんか知んねェケド、これ着けてたんだよね｣
｢なんで、俺に、｣
｢ん？あぁ、何となく｣
｢ぁ、｣
足場が安定しない。クラクラする。
まるで真冬の深く冷たい海に投げ込まれた感覚だ。
覚えてない。そう、覚えていなかったのだ。
一緒に過ごした、約1ヶ月を。
私だけの、妄想となってしまった。
｢.......なに？そんな顔して。つまんね。飽きた。ジェイド行こぉ〜｣
｢おや、もういいんですか？｣
｢飽きたっつってんじゃん。あ、そーいやアズールは？｣
｢ボードゲーム部に行くそうです｣
｢へぇー｣
そう言って2人は去っていく。
あんなの、知らない。
彼から出てくる友達の名前も、彼から発せられるあんな声も、あんなに大きくゴツゴツした手も、高い身長も、私をうつさない興味のなさそうなあの瞳も、全部、全部。
小さくなる2人の背中を見つめるしか出来なかった。
｢は、ははっ.......｣
乾いた笑いしか込み上げてこなかった。
重たい足を引き摺りながら家路に着く。
瞬間移動しても良かったが、魔法を使う気力なんてなかった。あの家に早くついたところで、することなんて何も無いのだから。
【一つの大切な居場所が消えた日】
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Ria*(プロフ) - すみませんごめんなさい…。前にしたコメントゆっこさんのことを呼び捨てに…！！わざとじゃないんです、ごめなさい！ゆっこ"さん"です！訂正させてください！！ (2020年8月6日 10時) (
レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
白玉の星(プロフ) - 速く………………速く………………思い出してほしい…これからも頑張ってください……………… (2020年8月5日 21時) (レス) id: 897ea2c55e (このIDを非表示/違反報告)
ちぃすけ。(プロフ) - 全編見たとき泣きました…（ ; ; ）この作品が今までで一番好きです！！更新ものすごく楽しみにしてます！！頑張ってください！ (2020年8月5日 20時) (レス) id: 0f6c0c9d97 (このIDを非表示/違反報告)
Ria*(プロフ) - 続編心待ちにしてました！ゆっこの作品大好きです！これからも楽しみにしています！！ (2020年8月5日 18時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 名前変換させてほしい… (2020年8月5日 12時) (レス) id: ed99c8170d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆっこ | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/novel/series/1297564
作成日時：2020年8月4日 20時
