俺達と君は知っている~俺達は知っているsecond story~

やめろ。（上杉） ページ7

「ふざけんなよ・・・」

パアン！


突然の破裂音に、反応するのが少し遅れた。

大原と話していたのもそうだし、それ以前に、この状況で鳴るはずのないその音が鳴り響いたことが不可思義過ぎた。


「美門・・・！？」

「麻世夏ちゃん・・・！」

美門が、平野とかいうやつに手を挙げたらしい。

大原が愕然としている。




「違う・・・違うでしょう！彩ちゃんはずっと悩んでた！彩ちゃんを殺したのは彼方達なのよ！」



不意に飛び込んできた平野の言葉が、



「それでも彩ちゃんを信じてあげればよかったんじゃない！でも彼方達は違った。誰一人、明衣を疑おうともしなかった。誰一人、あたしを彩ちゃんが虐めていたと信じた！あの時、ほんの少しでも彩ちゃんを信じてあげなかったのは彼方達なのよ？




・・・彩ちゃんよりも明衣を信じたのは！」



俺の傷口を真面に抉って、








視界の隅で見つけた、理性を失って平手を上げる美門に飛びついて。

「やめろ美門！」

「やめて美門君！」

大原も同時に飛んで。




こいつも、俺達と同じなんだと知った。






・・・息が、できなかった。




あの時、大原を信じたのは俺だった。


俺はあいつを認めていた。



彼女を信じられなくなるほどに。




まだ乾き切らない傷口に突き立てられた平野の言葉、一つ一つが俺の息を止めようとする。



ほんとは、傷つく権利すらないことを、




俺達は知っている、けど。






彼女に会って、謝りたくて。


彼女につけた傷を、取り戻したくて。




だから俺達は行く。





向けた背中に、大原の声で‘頑張って’と聞こえたのは、まだ大原を信じたい俺の幻聴だったとしても。







もう、俺は、俺達は振り返らない。






失ったものを取り返しに。









今すぐ行くから。








だから、待ってろよ、









立花。

健闘を祈る（奈子）→←ふざけんなよ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す