俺達と君は知っている~俺達は知っているsecond story~

馬鹿野郎 ページ20

アーヤを抱えた上杉が柱を飛び越えていく。

アーヤの長すぎる髪の端が燃え、上杉がそれを手ではたき落とすと、火は一層強くなった。

二人の姿が完全に見えなくなって、俺はふっと息を吐く。

元々、15年前に断つ予定だった命だ。
今更惜しくもなんともない。



それにさ、アーヤ。

15年前からずっと思い続けてきた女の子を命がけで救ったって、なんかかっこよくない？

俺みたいなのでアーヤが助かるなら、本望ってやつだしね。


火の手はだんだん迫ってきている。

さっきより格段に熱くなっているし、轟音と共に崩れ落ちる木々によって、座り込むスペースさえ消えていく。

俺、マジでここまでだな。

思い返さなくてもつまんない人生だった。

アーヤに出会って、やっと夢中になれるものを手に入れて、なのにそれを自ら手放した。

出会ったばかりの大原に、平野に、そそのかされて、大事なものを失った。
大事な人を失った。

この15年間、自分が生きている意味を問いながら、誰にも言えずにアーヤを想い続けていた。


ねえ、アーヤ。

こんな俺が、まだ君を好きでいていいのかわからないけど。

でも、最後の最後に君を救えてよかったよ。

それだけで、俺が生きていた意味になったよ。

「・・・ありがとう。」

煙を思いっきり吸い込んで、息苦しくなる。

咳き込みながら目を閉じる。


ありがとう、皆。
ありがとう、アーヤ。


俺、生きててよかった、かも。


「・・・何言ってんだ馬鹿野郎！」


・・・は？

「遺言チックなこと言ってんじゃねえよ！お前まだ生きてんだろ！？」

慌てて目を開けて、愕然とした。

「若、武？」

「姫からの言伝だよ。」

「黒木・・・！？」

やべ、幻覚か？

目の前に若武と黒木がいるんだが・・・

「マジだよ！マジだから黒木の話を聞け！」

若武がわめく。

・・・やっぱ幻覚か？

「美門、姫から言伝だ。」

黒木が後ろで束ねられた黒髪をかき上げて言った。


「『翼だけ残して行くなんてありえない。今すぐ翼を助ける！だって私たちは、」

そこで少し切った黒木は、意味ありげに微笑んで、ゆっくりと続けた。







「『私たちは、探偵チームKZでしょ！？』」









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