狂い愛（短編集）

独占 あほの坂田。 ページ2

｢おかえりなさい！
今日は坂田くんが好きなオムライス作ったの｣

俺の荷物を受け取りながら言うめあ
傍から見れば至って普通の夫婦。
しかし俺たちは傍から見れば異常なのだろう。


｢痛っ､､､｣

とっさに口から出た言葉。
テーブルの角に軽くぶつかっただけ。
これが普通の人なら何事もなかったかのように済まされるくらいの程度。
しかし、


｢坂田くん大丈夫､､､？｣

他の人から見れば大袈裟だと思われるくらい目に涙を浮かべ俺を覗き込むめあ。



俺は足が上手く動かない。


きっかけは2年前。
めあと俺はその時ただの幼なじみでめあには彼氏もいた。


しかしめあとたまたま2人で歩いている時事件が起こった。

近くで工事していた足場が崩壊し彼女の頭上に降り掛かった。
とっさにめあを押した俺のおかげで彼女は大事を免れた。

しかし、逃げ遅れた俺は木材の下敷きとなった。


幸い足が動かなくなる程度で済んだが彼女は自分のせいだと思っているらしい。
彼女は当時付き合っていた彼氏と別れてまで俺に尽くしてくれてる。



｢明日、高校の同窓会なんだけど行ってもいいかな､､､｣

申し訳なさそうに俺の顔を伺うめあ


｢行ってきたらええやん。

俺は1人でどうにか頑張るから。｣

めあが居なくて大丈夫かなぁ、、なんて少し悲しそうに呟く。



そうすれば｢やっぱいいや。｣と言いながらビールを注いだ。









深夜目覚めてしまった俺は隣にいるめあが寝ていることを確認してから軽い足取りでリビングに向かう。

残念ながら俺の足はとっくに完治していた。
確かにあの日足を強打した俺の足はもう歩けないと本気で医師に言われたくらい酷い状態だった。

しかし、奇跡的に俺の足は完治したのだ。


もしここでめあに完治していると告げたら彼女はどうするだろうか。
もしもう大丈夫と言ったならどうするだろうか。

少なくとも今のように俺に縛り付けては置けない。
彼女は俺の将来をダメにしてしまったという罪悪感からは解放され楽になるだろう。


しかし俺は彼女にそのことを打ち明ける気などサラサラない。

俺の足が動かなくなった日から、彼女を独り占めできると知った日からこの関係から逃れることができない。


一生離さない。





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