双子vs双子【宮侑】 (ページ15)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:60,187 hit

15 ページ15

「なんかしたん？」

「いや、ちょっと突き指した」

　大丈夫なん、見せてみい、と言ってくる侑くん。
　いやギャラリーの人こっち見てるんでやめてください。

「この指？」

「ううん、こっち」

　侑くんが指したのは昔突き指した方。
　昔、ちゃんとすぐに処置しなくて、少し曲がってしまった薬指だった。

　薬指はあまりトスに影響しないから、あんまり支障はない。

　そう言うと、確かに、と返ってきた。

「でも薬指は大切にせんと」

　また、真剣な顔。最近はこの顔をすることが増えてきた。
　普段ヘラヘラしている侑くんだから、この顔をされると調子が狂ってしまう。

　侑くんの顔に手を寄せられかけ、はっとしたわたしは途中でぱっと手を引き抜く。

　また気まずくなる。

「侑」

　不意に侑くんの背後から聞こえた声に、侑くんはギクリと肩を震わせた。

　振り返る肩越しに、声の主が見えた。

(えっ、かわ…………)

　可愛い。

「おまえが戻ってこんから練習始められん。
　かなり長い休憩取っとるし、男バレがずっと休憩しとったら女子が休憩出来へんやろ」

　侑くんと並んだ時の身長差的におそらく175cmくらいだと思う。
　十分背は高いはずだけど、侑くんと並ぶせいで小さく見える。

　多分、侑くんの話によく出てくる北さんだと思う。
　侑くんも見た目はかわいい系って言ってた。

　ぱっちりとした目がこっちへ向いた。

「すまんな、侑が」

「いえ……わたしの怪我を心配してくれただけで……
　あの、だから、あんまり責めないであげてください。わたしのせいでもあるので」

　あー人見知り発動しちゃったかも。
　ちょっと噛んじゃったかもしれない。

　北さんは、微笑んで言った。

「おおきに。
　あ、差し入れもおおきにな」

　そして振り返って、始めるでー、とみんなに声をかけた。
　侑くんも手を振って行ってしまう。

　いい人だったな。北さん。侑くんは怖い怖いって言ってたけど。

　2人が居なくなるとギャラリーの声がうるさくなってきて、私は舌打ちをする。

　どうやら侑くんがうるさすぎるギャラリーを睨んだらしく、途端に静かになる。
　わたしの舌打ちで静かになったみたいで地味に快感を覚えた。

　冷やすのをやめてテーピングをし、練習に合流した。