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「今日やたら視線感じたんやけど」
「あ、わたしのせいかもしれない」
「Aの？
なんかしたんか？」
片付け中にあかりに聞かれ、先週奢ってもらったことと、手料理を振る舞う約束をし、今日男バレに差し入れをしたこと、北さんに感謝をされたこと、侑くんが突き指を心配して来たことを話す。
あかりはニヤリと笑って言った。
「それは仕方ないなあ。
てゆうか、そんなとこまで進んどったんやね？」
「ぜ、全然だよ。侑くん、みんなにそんな感じだし」
「でもあいつ、そういう差し入れは受け取らんことにしたらしいやん」
え、と声が自然と漏れた。
初耳だった。
侑くんは先々週くらいから、差し入れを受け取らないようになったらしい。
黙ったわたしに、脈アリ、と明かりが小突いてくる。
じわじわと顔が赤くなってきた気がして、ぱっと顔をあげて誤魔化した。
「……もう！先行っちゃうから！」
「ちょ、照れとんの？待って〜」
あかりとの会話を切り上げ、モップかけを終わらせるべく走り出した。
＊
あかりのイジりは練習が終わってからまた再開した。
「彼氏、今日は早めに練習切り上げとったしまた待ってるんちゃいます？」
「彼氏じゃないから！」
「……お？居るように見えるんやけど」
その言葉にぱっと顔をあげる。
「いや、あれ治くんとめいじゃん？侑くんいなくな……っひゃ！」
「あはは、驚いてやんの〜」
いきなり首に冷たい缶を押し付けられて思わず悲鳴をあげる。
あかりじゃない、低めの声に振り向く。
「ちょっと侑くん！やめてよね！
ぶりっ子みたいな声出たじゃん！」
「おもろい声聞いて笑ってしもたわ〜」
「侑くんのせいだからそれ！
あーもう最悪……」
媚を売るそこら辺の女の子みたいな、こんなぶりっ子みたいな真似したい訳じゃないのに。
侑くんもキモいって思ったかも。
「ま、可愛くもあったけどな。
今日一緒に帰ろうや。送る」
「……え、あ、ま、まぁいいけど……」
わたしの動揺に気付かず、侑くんは平然と歩き出した。
あかりは、と思って周りを見回すと、もう既にいなかった。
代わりに携帯がブー、と振動する。
〈後はお熱い2人でどうぞ〜〉
そんなんじゃないから、と打とうとして、全部消す。
代わりに侑くんの後ろ姿とのツーショットをメッセージと一緒に送る。
〈ありがと〉
その後にきた振動には無視をして、わたしも3人の元へ向かった。
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作者名：ビール瓶 | 作成日時：2021年8月10日 19時
