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アタック練習はぶっちゃけ一番楽しい。
わたしは打たないけど、上手く上がった時にアタッカーがボールを思いっきり叩いて、気持ちいい音がなるのが好きだ。
ナイストス、と言われるのも好きだし、ボールが手にはまる感覚も気持ちよくて、セッターって得なポジションだといつも思う。
わたしは速攻はあまり得意じゃない。
ゆっくり丁寧にトスをあげる方が、落ち着くことができて好きだから。
でも、アタッカーが突っ込んできて、その手に目掛けてボールをあげられて、その手に上手く収まったとき。
その時の達成感は、かなりある。
ボールが向かってきて、両手の間から影が落ちてきて、うん、いい感じ。
「きゃー!!」
「いてっ」
「大丈夫!?」
不意に響いた女子の悲鳴におどろいて、手の力が抜けてしまった。
「大丈夫……です。多分」
こんなクソでかい悲鳴初めてや、と先輩が呟いた。
突き指したかも。
手のひらをグーパーしていると、めいがきて、突き指したんでしょ、とわたしの手を取った。
「よくわかったね」
「まぁ、双子ですから」
先輩は休憩を取りたそうにしていたが、男バレが休憩しているので取れない。
練習は急きょサーブ練に変わって、わたしはとりあえず指を冷やしておくことになった。
なんだったのだろうかと、男バレを見ると、皆が一箇所に集まっていた。
これうめぇ、と聞こえたし、どうやら侑くんが中心にいるようで、ハニーレモンを食べているのかなと思う。
真上のギャラリーから、一体誰が、と聞こえてくる。
(もしかして、まずかったかな)
いや確実にまずい。やらかした。うわ侑くんと目あった。こっち来るなこっち来るなこっち来るな。
その思いも虚しく、侑くんはこっちへ向かってきたのだった。
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作者名:ビール瓶 | 作成日時:2021年8月10日 19時