58話 ページ10
目の前でゴンチャロフの作った料理を美味しそうに食べるA。
その顔は本当に幸せそうで、見ていてとても微笑ましい。
……ある一点を除けば、本当に完璧だったのだが。
ぼくはAの袖をじっと見る。
そこには
当たり前だが、Aはそれに気付いていない。
「Aさん、袖に塵が付いていますよ」
「え?どこ?」
肉を頬張りながら袖を見るA。はしたない行為だがそれすらも愛おしい。
クスクス笑ってぼくは彼女の袖に手を伸ばす。
「はい、取れました」
「有難うドス君!」
そう言って満面の笑みを浮かべるので、つられてぼくも少し微笑む。
こんな物を仕向けた輩に見当はついている。だからこそ対策を取りづらいのだが。
Aに一言断って、ぼくは自室に戻る。
そして塵がついていると偽って取り除いた盗聴器を取り出し、語りかけた。
「一つ忠告しておきましょう。──Aさんに手を出せば、ぼくが罰を与えます」
機械の向こうで聞いているであろう彼に向かって宣戦布告し、ぼくは盗聴器を踏み潰した。
☆
「矢張りバレてしまったか」
そう言いつつも残念そうな雰囲気は微塵も感じさせない太宰治。
彼こそがAに盗聴器を仕掛けた張本人。
一目見た瞬間から、Aの服に盗聴器が仕掛けられている事に気付いた太宰は、すれ違いざまにこっそり抜き取り、ついでに自分の盗聴器を仕掛けた。
Aは盗聴器を付けられている事に気付いていないようだった。
初めはストーカーの類かと思って尋ねるもその線はなさそうなので、身内の仕業と考え盗聴器を仕掛けた訳だ。
──それがまさか、あの魔人だったとは。
耳のインカムを外し、思考する。
どうしてAが魔人に愛される事になった訳は不明だが、これは非常に危険な状態だ。
「どうにか彼女をあの魔人から引き離さなければならないね」
AAは何も知らない一般人だ。それは今日少し話しただけで分かる。
だからこそ、あの男と一緒に居てはならない。
彼女に自覚はなくとも、既にもう片足を闇の世界に突っ込んでいる状態なのだ。
魔人がAをどうするつもりかは分からないが、あの様子を聞くに傷つけるつもりはなさそうだ。
一先ず様子見といこう。
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食塩水(プロフ) - 名前さん» 長い間待っていて下さりありがとうございます!優しいお言葉、身に染みます…これからも不定期更新ではありますが、あんなにお待たせしないように書き進めていきたいと思います! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
食塩水(プロフ) - まやさん» 長い間待っていて下さりありがとうございます!これからはあんなにお待たせする事がないように書き進めていきたいと思います…! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
食塩水(プロフ) - あやめさん» 更新お待たせ致しました…!2ページ"も"と捉えて頂けてありがたいです!自己満足な作品ではありますが少しでも楽しんで頂けるよう、もっと更新出来るように頑張りますね! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 更新されてる……ありがとうこざいまああす!これからも作者さんのペースで頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2020年6月14日 21時) (レス) id: 6e285a92e8 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 更新ありがとうございます!!これからも更新待ってます!頑張ってください!!!! (2020年6月14日 15時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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