56話 ページ8
異能力を見せてあげると豪語した太宰さん。ただし見せるのは国木田さんらしい。本人は納得していないみたいだけど。
「だって私の異能力はそんな簡単に見せられるものじゃないし」
「僕は面倒臭いからやだ!」
「解体しても良いなら妾がやるけどねぇ」
「…………………………俺がやろう」
国木田さんは困ったように眼鏡を押し上げ、迷った末に承諾した。
横で「さっすが国木田くん!」と太宰さんが煽てている。想像通りというか、画面越しに何度も見た光景。
「時に小娘……」
「Aです」
「……A。何故そんなに異能力が見たいんだ?」
「ただの好奇心です!」
満面の笑みでキッパリ言い切る私に、国木田さんは呆れ顔。対して私は、国木田さんに名前を呼ばせる事に成功したので満足気だ。
えへへ、一度でいいから推しに名前を呼んで欲しかったんだよね!満足!
国木田さんは溜息をつき、手帖を取り出した。
「頁を無駄に使いたくないんだが……」とブツブツ呟いている。すみません、でも使ってくれるんですね!優しい!好き!
「異能力、独歩吟客!」
国木田さんが手帳の頁を破る。すると紙は光を帯びて、変形していく。あっという間に紙だった物は、ボールペンへと姿を変えた。
「ひゃ〜〜!!最高に格好良いです!!ありがとうございました!!!」
テンションが最高潮に達した私は、店員であるにも関わらず黄色い声を上げてパチパチと拍手を送る。
国木田さんは少し照れているようで、顔を背けた。は?可愛いなおい。
素敵!最高!と褒めちぎっていると国木田さんが、異能力によって作り出したボールペンを差し出した。
「お前にやる」
「え?いいんですか?」
「ああ。仕事中にメモを取ることは少なくないだろう。……これからも頑張れ」
「え、優しい……好き……」
今めっちゃキュンときた。
つまりこれって就職祝いでしょ?会ってすぐの女にくれるとか優しすぎでは??そんなん好きになるしかない。
国木田さんには「女がそう簡単に『好き』などと口にするな!」と怒られた。でも好きなものは仕方ない。
「うふふ。国木田くんが女性に贈り物をするなんてねえ。じゃあAちゃん、私からは心中をプレゼントしよう!」
「あ、それはちょっと無理です。生きなきゃならない理由が出来たので!」
国木田さんをからかいながら、懲りずに心中を申し込む太宰さんに、私はボールペンを胸に抱いて、笑い返した。
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食塩水(プロフ) - 名前さん» 長い間待っていて下さりありがとうございます!優しいお言葉、身に染みます…これからも不定期更新ではありますが、あんなにお待たせしないように書き進めていきたいと思います! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
食塩水(プロフ) - まやさん» 長い間待っていて下さりありがとうございます!これからはあんなにお待たせする事がないように書き進めていきたいと思います…! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
食塩水(プロフ) - あやめさん» 更新お待たせ致しました…!2ページ"も"と捉えて頂けてありがたいです!自己満足な作品ではありますが少しでも楽しんで頂けるよう、もっと更新出来るように頑張りますね! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 更新されてる……ありがとうこざいまああす!これからも作者さんのペースで頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2020年6月14日 21時) (レス) id: 6e285a92e8 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 更新ありがとうございます!!これからも更新待ってます!頑張ってください!!!! (2020年6月14日 15時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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